KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の参百参拾伍・・・マラソン

「ついにこの日がきたな」

「手ぐすね引いてお待ちしておりました」

「絶好の日和やな」

「日頃の行いのタマものでございますね」

「よくぞここまで厳しい修行に耐えてきたな」

「努力は決して裏切りません」

「せ〜の!」

グイッ! グイッ!

「イデッ!」

ドタッ! ドタッ!

ゴミの収集所から拾ってきた短パンに
ランニング姿。
ふくらはぎに力こぶを出そうとして足がつり、
その場に倒れこんだのは
先生とその弟子であった。

小林 「ともかく、
 この69キロマラソンに勝利すれば、
 賞金69万や」
北小岩 「それだけのお金があれば、
 一生暮らしていけますね。
 それに、副賞の『秘密の69』というのも
 気になります」
小林 「もちろん、飛び切りの美女との
 69以外に考えられへんな」

物欲と性欲に背中を押され、
フルマラソン以上の距離の大会に
出場を決めた師弟。
顔見知りの上位候補には、
1ミリも練習していないとウソをつき、
実は毎日10キロのランニングを
欠かさず続けてきたのである。
二人は逃げ足だけは天下一品なので、
見かけよりはやるかもしれないのだ。

「よ〜い!」

スターターが両手を上げ、股を広げた。

ボスッ!

ムエタイ姿の女性が、
スターターの金玉を蹴り上げるのを合図に、
マラソンはスタートを切った。

北小岩 「玉がつぶれた音がしましたが、
 大丈夫でございましょうか」
小林 「人の玉金より、
 俺たちの賞金のことを考えようや」
北小岩 「そうでございますね。
 このペースメーカーさんに
 ぴったりくっついていけば、
 おのずと勝利が見えてまいります」

ペースメーカーは褌いっちょうなのだが、
次第にゆるみ始め、
仕舞いに完全にとれてしまった。

小林 「ぶらぶらが気になって、走りづらいな」

プ〜!

小林 「臭え!」

油断をした隙に、ペースメーカーとの間に
数人ランナーが入ってしまった。

小林 「しゃあない、このまま行こうや」

しばらくすると、
エナジーチャージ所が見えてきた。

小林 「長い道のりや、
 ここで補給したほうがええな」
北小岩 「わたくし、
 このロシアン饅頭をいただきます」

パクッ! ズンズンズン!!

北小岩 「イチモツが突然元気に!」

ビヨヨーン!

北小岩 「ダメでございます!
 これでは走れません!!」
ロシアン饅頭とは、
いくつかの中に勃起饅頭が含まれていて、
それに当たってしまうと
ブツが膨張しすぎて
走行不能になってしまうのだ。

北小岩くん、勃起にてリタイア。

小林 「お前の分もがんばるだけや」

そこから数キロ先には、
異常に強い照明がたかれ、
乾燥ガスが噴出している場所があった。

小林 「う〜、のっ、のどが乾く!」

すぐ先に給水所を発見したが、
スポーツドリンク&ロシアンひまし油と
大書されている。

小林 「北小岩はロシアンパワーにやられた。
 だが、確率からいけば、
 二人が同じようにぽしゃる可能性は、
 かなり低いやろ」

乾きは限界に達していた。

小林 「これや!」

一か八かの勝負に出たが、紙コップの中身は。

小林 「うっ!もっ、もれる〜。
 あそこに簡易型便所が!」

先生が近づくのと同じ速度で、
便所は遠ざかっていく。
それも死に物狂いで到達した地点から、
スタートの方角に向けて。
 
先生は指で尻の穴に栓をして
コースを逆戻りしたが、
50メートルほどで力尽きた。
ここに師弟の夢終わる。

小林秀雄さんへの激励や感想などは、
メールの表題に「小林秀雄さんへ」と書いて
postman@1101.comに送ってください。

2011-03-06-SUN

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