チンリーン チンリーン
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北小岩 |
「郵便屋さんでございますね」 |
チンリーン チンリーン
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北小岩 |
「むっ!
目の錯覚でございましょうか。
郵便屋さんは、
上下とも何もつけておりません。
おにいさ〜ん、ブラブラですよ〜!」 |
郵便屋
さん |
「しまった!
公園のトイレの個室で用を足した時だ。
僕はズボンもパンツも脱ぎ、
全裸になって事にあたる癖が
あるのですが、
急いでいたので
そのまま配達に戻ってしまったのです。
とってきますね。
ありがとう!」 |
北小岩 |
「仕事熱心な方でございますね」 |
少し違う気もするが・・・。
ともかく戻った郵便屋さんは。
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郵便屋
さん |
「先ほどは失礼しました。
小さめに見えたかもしれませんが、
ベッドの上で見ると
かなりの上物なんですよ。
それはそうとして、
北小岩さんに郵便です」 |
北小岩 |
「ありがとうございます。
え〜と、
小学校時代の友だちからですね。
そういえば彼から手紙を頂戴したのは、
4年前でございます。
ついに!」 |
小林 |
「ついにどうした。
さては俺に隠れて、
いい思いをしようと
企てとるんやないか」 |
北小岩 |
「あっ、先生。
めっそうもございません。
わたくしの竹馬の友が、
4年間の旅から
帰ってきたのでございます」 |
小林 |
「4年もどこをほっつき歩いてたんや」 |
北小岩 |
「最初の2年間は、
階段をずっとのぼっておりました。
その後の2年間は、
階段をずっとおりておりました」 |
小林 |
「なんやそれは?」 |
北小岩 |
「わたくしも彼に話を聞くまで
知らなかったのですが、
世界の秘境には
とてつもない階段文明があるそうです。
そこには何千、何万という階段があり、
のぼり終えるのに
短くて1年、長いものでは
数十年というものがあるらしいのです」
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小林 |
「それほどの期間をかけるんやから、
相当ええことが待ってるんやろな」 |
北小岩 |
「噂では数本当たりがあり、
この世のものとは思えないほど
気持ちのいい思いができるそうです」 |
小林 |
「なるほどな。
そいつは片道2年の階段を
選択したんやから、
相当破廉恥な思いを
しているのかもしれんな」 |
北小岩 |
「そうでございますね。
今からそのくだりに入ります。
え〜と、
『僕はついに階段の頂上に到達した。
そこにあるのは、
セクシーな竜宮城ではないかと
想像していた』」 |
小林 |
「ええなあ。
核心に近づいとる。
それでどした」 |
北小岩 |
「『しかし、置かれていたのは、
何の変哲もない丸椅子であった』」 |
小林 |
「そこに座るとスペシャルなサービスでも」 |
北小岩 |
「『上には空き缶が置かれていた。
缶を傾けてみると屁の匂いがした』」 |
小林 |
「2年かけたんや。
人類の歴史に残るほどの
ごっつい臭さやったんやろな」 |
北小岩 |
「『拍子抜けするような、
何の変哲もない弱い屁であった』」 |
小林 |
「そんなものを嗅ぐために往復4年かい!」 |
北小岩 |
「『僕は4年の日々を、
後悔していない』」 |
小林 |
「・・・」
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世界にはまだまだ知られていない文明が
数多く存在している。
北小岩くんの友のようなものだけが、
秘境の文明について
語る資格を持っているのかもしれない。
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