キュッ
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北小岩 |
「これは先生にとって、
命そのものといってよいほどの
大切な湯呑みでございます」 |
キュッキュッ
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北小岩 |
「先生が若かりし頃、
一方的に思いを寄せていた
女性がいたのです。
その方のお家の前を通りかかった時、
中からおばあさんが顔をのぞかせ、
燃えないゴミを出したのでございます」 |
キュッキュッキュッ
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北小岩 |
「袋の中には、ひびの入った湯呑み。
女性の家族は10人おりましたので、
湯呑みが女性のものである確率は
大変低いのですが、
先生は間違いなくそうだ!
と己に思い込ませ、
後生大事に使っているのでございます」 |
キュッキュッキュッキュッ
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北小岩 |
「間接キッスとのたまいながら、
とろんとした目をしているのですが、
わたくしの勘では
湯呑みはおばあさんのもので、
おばあさんと間接キスを・・・あっ!」 |
ガシャン
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北小岩 |
「先生のお命が・・・ご臨終」 |
小林 |
「何がご臨終なんや。
おっ!
俺がご臨終やないか!! お前」 |
北小岩 |
「申し訳ございません!」 |
小林 |
「ほんとにお前は使い途のない男や!
まるでケツの穴や!!」 |
「そんなことはありませんよ!」
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小林 |
「誰や!
勝手に家の庭に入って来とるのは!!」 |
「失礼! 僕は一見それ以外に役に立たないものの
新たなる使い途を考案している、
使井途男(つかいみちお)と申します」
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小林 |
「胡散臭い名前やな」 |
使井途男 |
「たまに言われますが、
それはともかくケツの穴を
なめてはいけません。
ケツの穴にも他の使い道があるのです」 |
小林 |
「なんやそれは」 |
使井途男 |
「ではお見せいたします」 |
使井氏はパンツを脱ぐと、縁の下に体の形に穴を掘り、
うつぶせになった。
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小林 |
「むっ、蟻が!」 |
お尻の山を登った蟻が、
ケツの穴の方に落ちていった。
這い上がりそうになると、屁をかまして再び落とす。
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小林 |
「むむっ!
まるで蟻地獄や。
ある意味、見事や!!」
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使井途男 |
「そうなんですよ。
ケツの穴はこのように、
蟻地獄がいないところでも
同等の機能を果たすことができるのです」 |
使井氏は立ち上がるとがに股になり、
奇妙な超音波のような音を発した。
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北小岩 |
「蝙蝠が近づいてまいります。
あっ、使井さんの金玉に
逆さにとまりました!」 |
使井途男 |
「そうなんですよ。
金玉にもぶらぶらする以外の
使い途があるんです。
このように、岩や枝のないところでも、
蝙蝠が止まるアシストを
することができるのです」
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使井氏は他にも、
様々なものの新たなる使い途を提示したのだが、
ここで触れるのはよそう。
ともかく、人は自分が思っている以上に
己の使い途を持っている。
それだけは確かなようである。
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