チョロチョロチョロリン
「たくさんの蟻さんが歩いておりますね」
金玉を太ももで挟み込み、
地面にしゃがんで観察に余念がないのは、
弟子の北小岩くんであった。
「コガネムシを運んでおります。
なんという力持ちなのでございましょうか」
弟子は非力で有名で、
たくさんのエロ本を運んだ際に、
肩を脱臼しそうになったほどである。
「蟻さんはよく働きますね。
それに引き替えうちのお師匠さんは・・・」
町中の人誰一人として、
小林先生が真面目に働いているところを
見たものはいない。
唯一真剣になるのは、利き酒の名人の如く、
利きエロ本する時だけなのだ。
「先生は『働かないことが働くことである』と、
一見哲学者のような、
しかし、よく考えるとわけのわからないことを
おっしゃっております」
再び行列に目をやり。
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北小岩 |
「それにしても蟻さんたちは、
どこに向かっているので
ございましょうか」 |
ププププピ〜
「何やお前、さっきから蟻の門渡りが
どうしたこうしたと。
堂々とした変態ぶりやな」
品のない屁の音と共に、
品のない男がやってきた。
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北小岩 |
「いえ先生、蟻の門渡りではなく、
ただの蟻でございます。
この方々はどこに
向かっているのかと」 |
小林 |
「まあ、ついていくしかないやろな」 |
ともかく、お金を使わずに暇をつぶすために、
まぬけ面してとぼとぼ後を追う二人だった。
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北小岩 |
「意外に近くにございましたね」 |
家を出てすぐの電柱わきに、巣があったのだ。
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北小岩 |
「むっ、蟻の巣のそばに、
直径5センチほどの穴が
開いております。
はて?
何かの巣のように見えますが、
何でございましょうか」 |
「それはね、金玉の巣なんだよ」
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北小岩 |
「あなたさまは、どなたでございますか」 |
「金玉の巣に詳しい男だよ」
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北小岩 |
「そうでございますか。
金玉の巣というのは、
わたくし初めてうかがいましたが、
どういったものなのですか」 |
金玉の巣に
詳しい人 |
「蟻の巣に似てますね。
中が複雑なトンネルになっています。
金玉は塩がきいて、うまいのです。
ですから、
様々な生き物に狙われます。
それを避けるためですね」 |
小林 |
「例えばどんな生き物や?」 |
金玉の巣に
詳しい人 |
「タマクイです。
長〜い舌が、ちろちろと
トンネルをやって来て」 |
北小岩 |
「おっ、おそろしいでございます」
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金玉の巣に
詳しい人 |
「他にも玉入れ虫というのが
やっかいですね。
金玉は白と赤に
塗り分けられてしまいます。
それから、玉入れのカゴに向けて、
投げられてしまうのですね。
特に秋には大運動会の
競技種目に入っているらしく、
入った玉を数える時に
投げ上げられ地
面に叩きつけられるので、
何度も何度もやられているうちに、
しまいにつぶれてしまうんですね」 |
小林&
北小岩 |
「・・・」
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地面をこまめに観察すると、
蟻の巣の穴より何十倍か大きい
金玉の巣があるという。
しかし、そこでの生活も危険に満ちたものらしい。
はたして金玉に、安息の地はあるのだろうか。
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