シュッ
ボン
「今日はひさしぶりに、おうどんでございますね」
昭和を感じさせる丸いガスコンロに
マッチで火をつけたのは弟子の北小岩くんであった。
「好物とはいえ、
さすがに三食パンの耳では飽きてしまいます」
びりっ
「あとはおつゆを入れて、
おうどんを煮込めばできあがりでございます」
ぐつぐつぐつ
「おつゆのいい香りがいたします。
スプーンでひと舐めしてみましょう」
がらっ
「なんや、お前。
おなごのおつゆをひと舐めするとか
ぬかしとったな。
それほどまでに、
自分だけいい思いをしたいんかい」
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北小岩 |
「あっ、先生。
めっそうもございません。
わたくし、何年かぶりに
おうどんを食そうと思い」 |
小林 |
「これやな。
4分の3ほどいただくわ」 |
じゅるじゅる
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北小岩 |
「では、わたくしは4分の1と
おつゆをいただきます」 |
どこまでも謙虚な弟子なのである。
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北小岩 |
「つゆといえば、
長い雨の季節に突入でございますね。
わたくし、この季節、
ややもすると憂鬱になってしまいます」 |
小林 |
「デリカシー0のお前にしては
不思議なこっちゃな。
じゃあ、俺の友だちに、
梅雨を極限まで味わう達人夫妻がおる。
コツを伝授されにいくか」 |
二人は雨の中、骨だけになった傘をさして、
梅雨達夫妻のもとを訪れた。
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梅雨
奥さん |
「よくいらっしゃいましたね」 |
小林 |
「ひさしぶりやな。
俺の愛弟子が、
梅雨の楽しみ方を知りたいと言っててな」 |
北小岩 |
「お手数おかけいたします」 |
梅雨
奥さん |
「そんなにかしこまらなくていいのよ。
梅雨を楽しむには、
傘をささないことね」 |
北小岩 |
「なんと!」 |
梅雨
奥さん |
「大人になると、
お小水を漏らす自由が
なくなるじゃない。
だから私はね、
雨でずぶ濡れになりながら、
心ゆくまで漏らすことにしてるの。
上半身もびしょびしょ、
下半身もびしょびしょ。
下半身から湯気をたてながら
歩くのよ。
気持ちいいわよ」 |
北小岩 |
「確かに赤ちゃんの時には
漏らし放題だったのに、
大人になるとおもらしは
禁じ手となってしまいます。
奥様のお話をうかがっておりますと、
大変魅力的な行為に感じます」
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梅雨
旦那 |
「俺はね、少し趣をかえてね、
梅酒をつくるんだよ」 |
北小岩 |
「おいしそうでございますね」 |
梅雨
旦那 |
「これからの季節、
金玉がちょうど梅のようになるから、
焼酎にたっぷりつけるんだ。
微妙にイカの香りが混ぜってな。こ
れがなかなかいけるんだよ」 |
北小岩 |
「わたくし、ご遠慮いたしたく存じます」
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年に一度の長雨の季節。楽しみ方も、様々なようですね。
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