うわっはっはっは
突然の高笑い。
しかし、誰かの口から発せられたものではない。
うわっはっはっは
確かに聞こえる。
超常現象かと言えば、そうではない。
では、その正体は・・・
|
北小岩 |
「往復40キロ歩いてしまいました」 |
うわっはっはっは
|
北小岩 |
「膝が高らかに笑うのも、
いたしかたないことでございましょう」 |
声の出どころは、不肖の弟子の膝であった。
では、なぜそれほどの距離を
歩き続けたのであろうか。
|
北小岩 |
「よっちゃんイカが、
こちらで買うよりも
2円も安いと聞きました。
大金でございますから、
歩くのぐらいお安い御用でございましょう」
|
2円のために、
40キロを歩き抜いたのであった。
|
北小岩 |
「ただ今戻りました。
よっちゃんイカが2円も安いという情報は、
確かなものでございました。
お店の名前はイカ臭商店で、
むっ」 |
小林先生はちゃぶ台に、
大胆なグラビア写真を広げているのだ。
|
北小岩 |
「何をされているのですか。
もしや、
一人でなさるおいやらしいことを」 |
小林 |
「アホ抜かせ。
お前と一緒にするな!
実はな、
水着を作っているデザイナーから、
デザインを依頼されてな」 |
北小岩 |
「ほんとでございますか!
先生がデザインなさった水着が、
夏のビーチにあふれている景色を想像すると、
わたくし、これほど鼻の下が伸びる、
いえ、鼻が高いことはございません」 |
小林 |
「そやろ」 |
北小岩 |
「それで珠玉の生デザインは
どのようなものでございましょうか」 |
先生は画板を装着すると、
ビキニ姿の女性を描いた。
|
北小岩 |
「こっ、これは!」 |
小林 |
「どや!
覆うところと覆わないところを
入れ替えてみたんや」 |
要するに、本来隠れている部分が露出し、
それ以外は顔も含め、水着で隠されているのだ。
|
小林 |
「男用もあるで」 |
女性用と胸の部分が違うだけである。
|
小林 |
「顔も覆われているから、
男も女も見ることができない。
しかし、
その部分は直接自然と触れあっとる」 |
北小岩 |
「その部分にとっては、
かなりの解放感がありそうですね」
|
先生は画用紙をかえると、もう一枚描き始めた。
|
北小岩 |
「そっ、それは?」 |
小林 |
「ストリップ小屋をやっている知人から
頼まれてな。
新しいストリップのあり方を
模索してくれと」 |
舞台の上に着衣の女性が椅子に座って見ていて、
舞台下の男たちが裸体なのである。
|
北小岩 |
「たっ、確かに
新しい気もいたしますが・・・」 |
所詮、先生の浅知恵などこんなもの。
採用するほどのものではありませんね。
|