KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の参百八拾参・・・鬼

とぼとぼ

グーッ

北小岩 「お腹がすいてまいりました。
 そういえば、
 昨日から何も食べておりません。
 あっ」

空腹のあまり、猫背で道をさまよっていた
弟子の視線の先にあるものは、
分の日にまかれた豆であった。

北小岩 「まだほんの数日しか
 たっておりません。
 落ちたてほやほやといった
 ところでしょう。
 しかし、道に落ちているものを
 拾って食べるのはどうでしょうか。
 弟子がそんなことをしたら、
 小林先生の名声にも
 ひびが入ってしまうことでしょう。」

ゴクッ

北小岩 「ノドが鳴りますが、
 ここで何とかこらえなければ。
 わたくしごときの私欲の為に、
 先生のお顔に泥を塗るわけには」

ガリッ

北小岩 「あっ、先生」
小林 「節分の豆はうまいな」
北小岩 「今お食べになられたその豆は」
小林 「地面になってた豆や」
北小岩 「そうでございますか・・・」

この師に気を使うほど無駄なことはないであろう。
弟子が脱力していたその時。

「キャー、下着泥棒!」

小林 「なんやと!
 北小岩、追いかけろ!!」
北小岩 「かしこまりました」

この二人は弱肉であるため、とにかく逃げ足が速い。
実は逃げる者を追う時も、
尋常ではない速さを発揮するのだ。
なぜそこまで本気で走ったかといえば。

北小岩 「先生、
 どん詰まりに追い込みました!」
小林 「でかした。
 おいこら、
 盗んだ下着を
 こっちによこすんや!!」
北小岩 「それはわたくしたちの
 モノでございます!!」

師弟は盗んだ下着を
横取りしようとしていただけであった。

北小岩 「むっ!
 先生、彼は人間ではないようです」
小林 「お前、赤鬼やな。
 鬼のお前が、
 なぜパンティを盗んだんや?」
赤鬼 「だってよう、考えてくれよ。
 俺たちは何も
 悪いことをしてないのに、
 節分で豆をぶつけられて
 寒空に追い出されたんだぜ。
 腹いせにパンティでも盗まないと、
 やってらんねえだろ。
 友だちの青鬼は、
 女風呂をのぞいて回ってるよ」

小林 「なるほど。
 お前のいう事にも一理ある。
 ではこうしよう。
 俺が、
 お前が下着を盗む手助けをする。
 収獲は山分けや。
 北小岩は青鬼が
 風呂をのぞくヘルプをする。
 たまに北小岩も
 のぞけるようにする。
 どや」
赤鬼 「俺たちの気持ちを
 わかってくれる人間に
 初めて出会ったな。
 OKだ」
北小岩 「わたくしも
 望むところでございます」

かくして師弟は鬼たちとタッグを組み。

小林 「俺が肩車をしたる。
 これで高い場所のパンティも
 獲りやすくなるやろ」
赤鬼 「サンキュ!」

しかし・・・。

下着を
盗まれそう
になって
いる女性
「なにやってんのよ!
 こうしてやる!!」

びゅん

バッ

小林 「ぎょえ〜〜〜!」

女性の放った毒矢は、見事に先生の金的を射抜いた。

一方・・・

北小岩 「わたくしが肩車をいたします。
 これで女風呂が
 のぞきやすくなるでしょう」
青鬼 「ありがと!」

しかし・・・。
風呂を
のぞかれ
そうに
なって
いる女性
「てめえ!
 くらえ!!」

びゅん

バッ

北小岩 「どわ〜〜〜!」

女性の放った毒矢は、見事に弟子の金的を射抜いた。
 
鬼たちに関しては
やや同情の余地はあるかもしれないが、
鬼たちの悲しみに乗じて
スケベ心を満たそうとした二人に、
同情する必要などまったくないであろう。

小林秀雄さんへの激励や感想などは、
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2012-02-05-SUN

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