とぼとぼ
グーッ
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北小岩 |
「お腹がすいてまいりました。
そういえば、
昨日から何も食べておりません。
あっ」 |
空腹のあまり、猫背で道をさまよっていた
弟子の視線の先にあるものは、
分の日にまかれた豆であった。
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北小岩 |
「まだほんの数日しか
たっておりません。
落ちたてほやほやといった
ところでしょう。
しかし、道に落ちているものを
拾って食べるのはどうでしょうか。
弟子がそんなことをしたら、
小林先生の名声にも
ひびが入ってしまうことでしょう。」 |
ゴクッ
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北小岩 |
「ノドが鳴りますが、
ここで何とかこらえなければ。
わたくしごときの私欲の為に、
先生のお顔に泥を塗るわけには」 |
ガリッ
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北小岩 |
「あっ、先生」 |
小林 |
「節分の豆はうまいな」 |
北小岩 |
「今お食べになられたその豆は」 |
小林 |
「地面になってた豆や」 |
北小岩 |
「そうでございますか・・・」 |
この師に気を使うほど無駄なことはないであろう。
弟子が脱力していたその時。
「キャー、下着泥棒!」
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小林 |
「なんやと!
北小岩、追いかけろ!!」 |
北小岩 |
「かしこまりました」 |
この二人は弱肉であるため、とにかく逃げ足が速い。
実は逃げる者を追う時も、
尋常ではない速さを発揮するのだ。
なぜそこまで本気で走ったかといえば。
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北小岩 |
「先生、
どん詰まりに追い込みました!」 |
小林 |
「でかした。
おいこら、
盗んだ下着を
こっちによこすんや!!」 |
北小岩 |
「それはわたくしたちの
モノでございます!!」 |
師弟は盗んだ下着を
横取りしようとしていただけであった。
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北小岩 |
「むっ!
先生、彼は人間ではないようです」 |
小林 |
「お前、赤鬼やな。
鬼のお前が、
なぜパンティを盗んだんや?」 |
赤鬼 |
「だってよう、考えてくれよ。
俺たちは何も
悪いことをしてないのに、
節分で豆をぶつけられて
寒空に追い出されたんだぜ。
腹いせにパンティでも盗まないと、
やってらんねえだろ。
友だちの青鬼は、
女風呂をのぞいて回ってるよ」
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小林 |
「なるほど。
お前のいう事にも一理ある。
ではこうしよう。
俺が、
お前が下着を盗む手助けをする。
収獲は山分けや。
北小岩は青鬼が
風呂をのぞくヘルプをする。
たまに北小岩も
のぞけるようにする。
どや」 |
赤鬼 |
「俺たちの気持ちを
わかってくれる人間に
初めて出会ったな。
OKだ」 |
北小岩 |
「わたくしも
望むところでございます」 |
かくして師弟は鬼たちとタッグを組み。
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小林 |
「俺が肩車をしたる。
これで高い場所のパンティも
獲りやすくなるやろ」 |
赤鬼 |
「サンキュ!」 |
しかし・・・。
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下着を
盗まれそう
になって
いる女性 |
「なにやってんのよ!
こうしてやる!!」 |
びゅん
バッ
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小林 |
「ぎょえ〜〜〜!」 |
女性の放った毒矢は、見事に先生の金的を射抜いた。
一方・・・
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北小岩 |
「わたくしが肩車をいたします。
これで女風呂が
のぞきやすくなるでしょう」 |
青鬼 |
「ありがと!」
しかし・・・。 |
風呂を
のぞかれ
そうに
なって
いる女性 |
「てめえ!
くらえ!!」 |
びゅん
バッ
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北小岩 |
「どわ〜〜〜!」 |
女性の放った毒矢は、見事に弟子の金的を射抜いた。 |
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鬼たちに関しては
やや同情の余地はあるかもしれないが、
鬼たちの悲しみに乗じて
スケベ心を満たそうとした二人に、
同情する必要などまったくないであろう。
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