KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の参百八拾八・・・仲直り

グ〜〜〜

小林 「腹がへったな」
北小岩 「そうでございますね」
小林 「駅前でいなり寿司屋の
 割引券チラシをもらったが」
北小岩 「写真を見ていると
 余計にお腹がすきますね」
小林 「俺もお前もおいなりさんを
 二つずつ持っているものの」
北小岩 「食べるわけにはいかない
 おいなりさんでございますからね」
小林 「しゃあない」
北小岩 「行かねばなりませんね」

二人はおのおのマイ爪楊枝を持って、家を出た。
どこに向かったのかと言えば。

女性販売員 「いかがですか、
 このフカヒレ入りの高級餃子
 おいしいですよ。
 どうぞ」
小林 「今、そこで高級寿司を
 味わってきたばかりやけどな」
北小岩 「お腹がパンパンでございます」

おいなりさんのチラシを見て、
食べた気になっただけである。

小林 「無理にでもというのなら」
北小岩 「味見してさしあげることも
 可能でございます」

師弟が押しかけたのは、
デパートの食品売り場であった。

小林 「贅沢三昧をしてきた俺たちには、
 屁のような味やな」
北小岩 「特筆には値しませんね」

その実、こんなにおいしいものは
生まれて初めてと思っているのだ。

「もう、
 あなたの顔なんか見るのもいや!
 吐き気がするわ!!」

「なにいってやがる。
 俺だってお前とは
 もう別れようと思ってたんだ。
 出てけ!」

突然、喧嘩を始めた夫婦がいる。
出てけと言ってもここは家ではなく、
デパートなのだが。

女性
販売員
「7階であなた方にピッタリの
 催しが行われておりますよ。
 ぜひどうぞ!」

意味がよくわからなかったのだが、
夫婦はエレベーターに押し込まれ7階へ。
意味もなく先生と弟子も乗り込んだ。

「よくいらっしゃいました。
 こちらへどうぞ」

うながされるままに進んだ。

「奥様、これをお持ちください」

湯呑みを渡され、熱湯を注がれた。

奥さん 「熱い!」
旦那 「だいじょうぶか!」

思わず旦那が湯呑みをつかむと。

奥さん 「あれ? 熱くなくなってきたわ」
7階の
女の人
「これは二人で持つと
 熱さがやわらぐ湯呑みなんですね。
 ここには、
 ご夫婦や恋人が喧嘩した際に
 仲直りしていただくためのグッズが、
 たくさんあるんです。
 仲直りトランポリンもいいですよ」

女の人が指を鳴らすと屈強な男たちがあらわれ、
夫婦がペタッと向き合った形にしてバンドで止め、
トランポリンの上に放り投げた。

夫婦 「うわ〜〜〜」

仲がよかろうが悪かろうが、
ともにバウンドするのみ。
弾みがおさまると、バンドがはずされ。

7階の
女の人
「お帰りにはこの靴をどうぞ」

履いてきた靴は処分されており、
かわりにお互いの右足と左足がひとつになった、
言わば二人三脚シューズといったものが
用意されていた。

旦那 「しょうがねえなあ。
 これで帰るか。
 お前、ちゃんと息をあわせ」

ドタ

言い終わらないうちに旦那がこけ、
支えきれずに奥さんもこけた。

奥さん 「しょうがないわね。
 いち、に、いち、に・・・」

その場で足踏みし、
息を合わせて二人は帰っていった。
意味もなく突っ立って見ていただけの
先生と弟子は必要ないが、
このような催し物会場は必要であろう。

小林秀雄さんへの激励や感想などは、
メールの表題に「小林秀雄さんへ」と書いて
postman@1101.comに送ってください。

2012-03-11-SUN

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