ピンピン
何かが張りつめた音がする。
どこが張りつめているのかと言えば。
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北小岩 |
「ちんちんではございません。
わたくしが胸を
張っているのでございます。
近頃、己が思っているほど
小さな存在ではない気がするのです」 |
何に対して返答しているのかはわからないが、
ジャストな答えが返ってきた。
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北小岩 |
「エヘン!
もしかすると、意外に大物かも」 |
その時だった。
「電報です!」
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北小岩 |
「ありがとうございます。
先生が懸賞に応募していた
『凄くエッチな小箱』が
当たったのかもしれませんね」 |
そんなことで電報が届くとは、
到底思えないのであるが・・・。
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北小岩 |
「えっと。むっ!」 |
そこには辛辣な文面が。
『北小岩、お前は自分で自分の事を
大きな人間になったと言ってるが、
お前がスケールの小さい男だという事は、
自分が一番よくわかっているだろう。
イキがるんじゃねえよ』
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北小岩 |
「うっ」 |
虚勢を張ってはいるが、
実は弟子は自分にまったく自信がないのである。
両の目から熱いものがこぼれた。
「お前、何うなだれとるんや。
みすぼらしい男が、
どん底までみすぼらしく見えるやないか」
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北小岩 |
「先生。わたくし、
自分がとっても小さな存在であることを、
見透かされてしまったのです」 |
小林 |
「そうか。
だがな、お前より小さなヤツなんて、
世の中にいくらでもおるわ。
俺の友人の愛人の友人に、
その研究者がおる。行ってみよか」 |
いつになくやさしい師であった。
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小林 |
「とんとん、入ってますか」 |
「入ってますよ」
符丁であろうか。
中から白衣を着た男が現れた。
「私が、小さいヤツの研究家・顕微検便です」
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北小岩 |
「そうでございますか。
わたくし、
己が小さな存在であることに
悩んでおりまして」 |
顕微検便 |
「あなたより矮小な存在を
お見せしましょう」 |
促され、小さな顕微鏡をのぞくと。
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北小岩 |
「微生物でございますね。
あっ、不気味な生き物が
スカート状のものをまくり上げ、
媚びながら
パンチラをしております!」
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顕微検便 |
「そうでしょう。
では、こちらは」 |
別の顕微鏡に目をやると。
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北小岩 |
「小さなちんちんのなさけない生物が、
自分のちんちんより
小さなちんちんを持った生物を
罵っております」
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弟子の表情がどことなく明るくなった。
自分はスケールが小さいという思い。
それは突如、鎌首をもたげて
男に襲いかかってくる。
しかし、
さらにスケールの小さな存在がいることは、
一応知っておいた方がよいかもしれない。
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