ブチ
「抜いても抜いても、生えてまいりますね」
ブチブチ
「わたくしに、
あなたの粘り強さはございません。
とても尊敬しているのですよ」
庭の草むしりをしながら、
雑草に語りかけているのは
弟子の北小岩くんであった。
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北小岩 |
「そうでございます。
雑草さんのことを
ほめたたえているだけでは、
わたくしの進歩がございません!」 |
ブチ
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北小岩 |
「痛い!」 |
ブチブチ
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北小岩 |
「痛痛い!
しかし、
君もそこから立ち直るのです!!」 |
力を込めて叱咤激励しているが、
激励している相手は、
引っこ抜いた陰毛であった。
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北小岩 |
「むっ、今、門柱に誰か隠れましたね。
さては、
わたくしの陰毛を狙っているのでは」 |
そんなことは万に一つもないであろう。
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北小岩 |
「出てらっしゃい!」 |
犬の糞を踏んだ瞬間のような、
なさけない顔をして現れたのは、
中学生の男の子だった。
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北小岩 |
「どうしたのですか。
泣いていらっしゃるようですが」 |
中学生 |
「実は僕、駅のそばを歩いていると
必ず因縁をつけられて、
恐喝されてしまうんです・・・」 |
北小岩 |
「それはつらいことでございますね。
わかりました。
わたくしの師は、森羅万象に通じ、
あらゆることの解決策を持っている
とても優れた方です。
相談してみましょう」 |
先生は決して頼れる男ではないのだが、
どのような展開になるのであろうか。
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小林 |
「そうか。ようがんばった。
北小岩、あれを持ってきなさい」 |
隣の部屋から入ってきた北小岩くんが
手にしているのは、
たくさんの透明なトゲだった。
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北小岩 |
「これは、バラのトゲを
先生が長期間かけて、
おしっこをひっかけたり、
握りっぺをかましたりして育て上げた、
世にも汚いものでございます。
この色が抜けて透明になったトゲに
タバスコをかけて、
顔にペタペタくっつけるのです」 |
小林 |
「それから、俺が精魂込めてつくった液を
ビニールに入れて、
口の中に隠しとくとええ。
相手に殴られたら、
今から俺が教える秘密の言葉を
つぶやくこっちゃ」 |
中学生は素直に従った。
駅に向かうとすぐに不良が寄ってきた。
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不良A |
「おい。何、しかとしてんだよ」 |
ボクッ(頬を殴った音)
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不良A |
「痛え! トゲが刺さりやがった。
それに今まで嗅いだことがねえぐれえ
臭え!
ううう。指がしびれてきやがった」 |
中学生 |
「そのトゲには、猛毒が塗ってあるんだよ。
それにありえないぐらいの汚物が
血管に入ったね。
69時間以内に、指が腐るよ」
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不良Aは真っ青になり、
ふらつきながら逃げて行った。
しばらくすると別の不良が近づいてきた。
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不良B |
「おめえ、上等じゃねえかよ。
有り金全部だしな」 |
ボクッ(口を殴る音)
ピシャッ
口から先生特製の、
大量の恥垢をどぶ水で溶いたおぞましい液体が、
不良Bの目に入った。
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不良B |
「痛え&臭え!
目が腐りそうだ!!」 |
中学生 |
「腐りそうじゃなくて、
69時間以内に確実に腐るよ。
致死量の毒と汚さを持った液が
目に入ったんだからな」
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不良Bは血の気の引いた顔で、
「おかあさん!」と叫びながら消えてしまった。
この中学生がとても
デンジャラスな男であるという噂が
不良たちの間で広がり、それ以降、
手を出すものはいなくなった。
先生の持つおぞましいまでの汚さが、
役に立つこともあるのだから不思議だ。
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