KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の参百九拾七・・・とげ

ブチ

「抜いても抜いても、生えてまいりますね」

ブチブチ

「わたくしに、
 あなたの粘り強さはございません。
 とても尊敬しているのですよ」

庭の草むしりをしながら、
雑草に語りかけているのは
弟子の北小岩くんであった。

北小岩 「そうでございます。
 雑草さんのことを
 ほめたたえているだけでは、
 わたくしの進歩がございません!」

ブチ

北小岩 「痛い!」

ブチブチ

北小岩 「痛痛い!
 しかし、
 君もそこから立ち直るのです!!」

力を込めて叱咤激励しているが、
激励している相手は、
引っこ抜いた陰毛であった。

北小岩 「むっ、今、門柱に誰か隠れましたね。
 さては、
 わたくしの陰毛を狙っているのでは」

そんなことは万に一つもないであろう。

北小岩 「出てらっしゃい!」

犬の糞を踏んだ瞬間のような、
なさけない顔をして現れたのは、
中学生の男の子だった。

北小岩 「どうしたのですか。
 泣いていらっしゃるようですが」
中学生 「実は僕、駅のそばを歩いていると
 必ず因縁をつけられて、
 恐喝されてしまうんです・・・」
北小岩 「それはつらいことでございますね。
 わかりました。
 わたくしの師は、森羅万象に通じ、
 あらゆることの解決策を持っている
 とても優れた方です。
 相談してみましょう」

先生は決して頼れる男ではないのだが、
どのような展開になるのであろうか。

小林 「そうか。ようがんばった。
 北小岩、あれを持ってきなさい」

隣の部屋から入ってきた北小岩くんが
手にしているのは、
たくさんの透明なトゲだった。

北小岩 「これは、バラのトゲを
 先生が長期間かけて、
 おしっこをひっかけたり、
 握りっぺをかましたりして育て上げた、
 世にも汚いものでございます。
 この色が抜けて透明になったトゲに
 タバスコをかけて、
 顔にペタペタくっつけるのです」
小林 「それから、俺が精魂込めてつくった液を
 ビニールに入れて、
 口の中に隠しとくとええ。
 相手に殴られたら、
 今から俺が教える秘密の言葉を
 つぶやくこっちゃ」

中学生は素直に従った。
駅に向かうとすぐに不良が寄ってきた。

不良A 「おい。何、しかとしてんだよ」

ボクッ(頬を殴った音)

不良A 「痛え! トゲが刺さりやがった。
 それに今まで嗅いだことがねえぐれえ
 臭え!
 ううう。指がしびれてきやがった」
中学生 「そのトゲには、猛毒が塗ってあるんだよ。
 それにありえないぐらいの汚物が
 血管に入ったね。
 69時間以内に、指が腐るよ」

不良Aは真っ青になり、
ふらつきながら逃げて行った。
しばらくすると別の不良が近づいてきた。

不良B 「おめえ、上等じゃねえかよ。
 有り金全部だしな」

ボクッ(口を殴る音)

ピシャッ

口から先生特製の、
大量の恥垢をどぶ水で溶いたおぞましい液体が、
不良Bの目に入った。

不良B 「痛え&臭え!
 目が腐りそうだ!!」
中学生 「腐りそうじゃなくて、
 69時間以内に確実に腐るよ。
 致死量の毒と汚さを持った液が
 目に入ったんだからな」

不良Bは血の気の引いた顔で、
「おかあさん!」と叫びながら消えてしまった。

この中学生がとても
デンジャラスな男であるという噂が
不良たちの間で広がり、それ以降、
手を出すものはいなくなった。
先生の持つおぞましいまでの汚さが、
役に立つこともあるのだから不思議だ。

小林秀雄さんへの激励や感想などは、
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2012-05-13-SUN

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