ぷにゅぷにゅ
「う〜む、お腹が出ているような気がいたします」
ぷにゅぷにゅぷ〜
「やはり気のせいではございませんね」
梅雨空のもと、青白いお腹をつまんでいるのは、
弟子の北小岩くんであった。
「なんや、お前腹なんか出して。
またいやらしいことを考えとったんやろ。
腹までは許せる。
が、その下の見苦しいものを出したら
一巻の終わりやで」
訳の分からないことをのたまいながら登場したのは、
ご存知、恥垢先生であった。 |
北小岩 |
「あっ、先生。
わたくし、昔はガリガリで
お腹の肉をつかむとあいたたた!
だったのですが、
近頃簡単に握れるように
なってしまったのです」
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小林 |
「そうか。実は俺もや。
なぜそうなってしまったのか、
原因究明した方がよさそうやな」
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北小岩 |
「そうでございますね。
やはり、食べ物でしょうか」
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小林 |
「俺たちの主食と言えば、パンの耳やな」
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北小岩 |
「懇意にしているパン屋のにいさんに、
極上のエロ本をさしあげたご縁で、
ただでいただいているのでございますね」
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小林 |
「うむ。
まあ、パンの耳だけなら
そんなに太らんと思うが」
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北小岩 |
「やはりあれがいけなかったですかね」
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小林 |
「そやな」 |
二人はパン屋の他にも精肉店からも
援助を受けていたのであったが、
このところ世知辛くなり、
脂しかもらえなくなっていたのだ。
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北小岩 |
「火を通したとはいえ、
脂をパンの耳で巻いて
食べ続けたのは失敗でしたね」
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小林 |
「しゃあない。
町はずれにダイエット道場が
できたやろ。
あそこにもぐりこんでみるか」 |
師弟は裏口から
こっそり道場に入っていったのだが。
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小林 |
「むっ!」 |
太った男があんぱんを食べようとすると、
ボンテージファッションの
怖そうなおねえさんが、
すかさず金玉を蹴り上げていた。
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北小岩 |
「玉金ダイエットとでも
いうのでしょうか」
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小林 |
「あれを続けられたら、
何か食おうとすると
股間が勝手に反応して激痛が走るやろな。
パブロフの金玉や」
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北小岩 |
「向こうの男性は、
おちんちん型のモノを
口から入れられました」
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小林 |
「エロ本を無理やり見せられとるな」
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北小岩 |
「わかりました。
海綿体ダイエットでございましょう」
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小林 |
「特殊な物質でできていて、
胃の中で、エロ本で
大きくされてしまうんやな。
確かに満腹を感じ、
食欲は失われるかもしれんな」
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町に新しく生まれたダイエット道場。
体重や腹まわりを気にする男たちが
集っているようだが、効果があるような、
ないような。
ま、とにかくろくなものでないことだけは、
確かである。
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