KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の四百拾四・・・広告

小林 「実りの秋になったな」
北小岩 「そうでございますね」
小林 「何か実っとるか」
北小岩 「何も実っておりませんね。
 むっ!」

先生と散歩をしている、
昼行灯こと北小岩くんの目が光った。
その先にあるのは巨大な糞。

小林 「どうやら、
 ただの糞ではないようやな」
北小岩 「そうでございますね。
 どてっぱらに何か書いてあります。
 ふむふむ。
 『便器の汚れに【ベンピカリ】』」
小林 「ようわからんが、
 ベンピカリという商品を
 広告しているようにも見えるな」

北小岩 「わたくしの友の知人のまた知人の
 あまりよく知らない人に、
 広告に詳しいらしい人がおります。
 聞きにいってみましょうか」
小林 「なんだか心もとないが、
 一応行ってみるか」

通常なら先生の大したことのないつてを
たどるところだが、
今回は珍しく
弟子の知りあいともいえない人を訪れた。

北小岩 「お忙しいところ
 大変申し訳ございません。
 先ほど道端の糞さんに、
 広告のようなものが
 書かれていたのですが、
 どういうことでしょうか」
広告に
詳しい
らしい人
「それはまさしく広告ですね。
 糞と人間は、
 ずっとず〜〜〜と
 長い付き合いがあるわけです。
 それだけ付き合っていると、
 中には人間と
 コミュニケーションできる糞も
 出てくるんですよ。
 その糞たちが
 人間のクライアントと交渉し、
 自分を媒体として
 利益を得るようになったのです」
北小岩 「確かに糞さんに
 便器みがき液の広告がついていれば、
 美しい連想とはとても言えませんが、
 商品に思いを馳せそうな気がいたします」
小林 「糞にとっての報酬は、
 どういうものなんや」
広告に
詳しい
らしい人
「高級食材を食ってできた
 糞になれるらしいんですよ」
小林 「わけがわかったような
 わからんような話やな」

プ〜ン

北小岩 「このお部屋は随分、
 蚊さんがいらっしゃいますね」
小林 「そやな。
 北小岩に止まった。いくで」

キーン

北小岩 「ううっ!」

蚊は弟子の玉に止まったのだ。
つぶれた蚊をみた先生が。

小林 「普通の模様やない」
広告に
詳しい
らしい人
「顕微鏡でご覧ください」
小林 「むむっ!
 身体に紙片のようなものがついとる。
 そこに『献血のお願い』と
 書かれとる」
広告に
詳しい
らしい人
「皮肉な感じがしますが、
 蚊が献血のミクロポスターの
 媒体になっているんですね」

知らない所で、
今までにない広告が増えているらしい。
確かに糞や蚊は、
人間と長い時間をともに過ごしてきたため、
意思の疎通ができるようになっていても
不思議はない。
他にも候補はあまたいるであろう。
今後に注目したい。

小林秀雄さんへの激励や感想などは、
メールの表題に「小林秀雄さんへ」と書いて
postman@1101.comに送ってください。

2012-09-09-SUN

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