KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の四百拾伍・・・秋のひとこま

トンカントンカン

おや、めずらしい。
日曜大工に精を出すは、弟子の北小岩くん。

北小岩 「夏の雨の仕業でございましょうか。
 すっかり縁台が腐っております」

トンカントンカン

ぼきっ

北小岩 「木で補強しようと思ったのですが、
 台の足が折れてしまいました」

木と言っても、
ゴミで出されていたかまぼこ板である。

北小岩 「実りの秋、
 わたくしに実りは来るのでしょうか。
 むっ、もしや!
 これは実っているのではないでしょうか」

何が実っているというのだろう。

北小岩 「今、わたくしは
 自分の金玉さんを覗き見てみました。
 すると、今までにない黒い輝きを
 放っているようなのでございます」
小林 「お前さっきから、
 なに訳のわからんこと言うとるんや。
 単に夏にフルチンのまま
 縁台で寝とったから、
 玉が日焼けしただけやろ」
北小岩 「確かにそうかもしれません」

やはり二人の会話など、聞くだけ無駄であった。

「宅配便です!」

珍しく荷物が届いた。

北小岩 「ありがとうございます。
 むむっ!
 わたくしの女性のいとこからなのですが、
 中身がパンティーと書かれています」
小林 「なに!
 よこせ!!」
北小岩 「いくら先生でも、いやでございます」
小林 「お前、恩を忘れたわけやないな」
北小岩 「わたくしのいとこは、
 若くてかわいいのでございます。
 そのような方が、わたくしを指名して、
 脱ぎたてほやほやのパンティーを
 送ってくれたのでございます。
 渡すわけにはまいりません」
小林 「うるせえ!」
北小岩 「あっ!」
小林 「開けるで!!」

ビリッ

強引に奪いとった師が鼻の下を伸ばした。

だが。

小林 「なんと!」

大騒ぎするほどのことではない。
単にパンとティーが入っているだけだった。

北小岩 「残念でございましたね!
 これはわたくしが飲食いたします」

見苦しい以外に表現しようのない風景。

先生宅の秋のひとこまであった。

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2012-09-16-SUN

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