冷え〜
「先週、秋とはいえ
かなり冷え込んできたと思いました。
しかし、今週さらに冷えが増してまいりました」
冷えびえ〜
「今、どれぐらい冷えているかと申しますと、
冷やし中華より激しいと言わざるを得ません」
意味不明なことをのたまっているのは、
弟子の北小岩くんであった。
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北小岩 |
「これでは本物の冬が来た時に、
むっ!」 |
弟子が目にしたものは。
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北小岩 |
「こんな巨大な抜け殻は、
見たことがございません。
いったい何が
脱皮したのでございましょうか」
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小林 |
「お前今、
脱ぐという漢字が入った言葉を言ったな」
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北小岩 |
「あっ、先生」
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小林 |
「相変わらずいやらしいな。
そんなに女が脱いだところを
見たいんかい」
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北小岩 |
「確かに脱ぐという漢字が入った単語を
使いましたが、
それは脱皮のことでございます。
この巨大な抜け殻をご覧ください」
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小林 |
「ふむ。
冬将軍になる過程の抜け殻やな。
冬将軍は出世魚みたいなもんや」
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北小岩 |
「そうなのでございますか」
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小林 |
「まず、冬足軽から始まって、
脱皮するごとに出世し、
最後は冬将軍になるんや」
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先生の言など信じるに値しないであろう。
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小林 |
「ともかく、
抜け殻の手の部分を見てみい」
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北小岩 |
「紙が挟まっております。
あっ、回転寿司一皿無料券です!」
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小林 |
「やったな。
直行や!」 |
何年ぶりの寿司だろうか。
皿にのったしめ鯖を前に、涙ぐむ二人であった。
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北小岩 |
「こんなにおいしいものが、
この世にあったとは」
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小林 |
「味わいつくされねばならんな」
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北小岩 |
「あまりのおいしさに、わたくし、
お小水がしたくなってまいりました」
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小林 |
「俺も便意をもよおしてきたわ。
それにしても、
信じられないぐらいでかい便所やな」 |
小便器と大便器にわかれ、用を足し始めたその時。
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北小岩 |
「うあわ。
便器が回転し始めました!」
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小林 |
「俺んとこもや!」 |
回転と行っても、
その場でくるくる回るわけではなく、
半径5メートルの円の軌道を、
便器が回るのである。
壁の張り紙には、
便器から外れてまき散らした者は、
10万円の罰金と書かれている。
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北小岩 |
「大変でございます。
便器と同じ速度で追いかけつつ、
放尿しなければなりません」 |
小林 |
「俺なんかもっと悲惨や!」
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世の中には、
面白い回転寿司屋さんがあるんですね。 |