北小岩 |
「早いもので、もう12月でございますね」 |
さっ
|
北小岩 |
「この布は、使えます」 |
ささっ
|
北小岩 |
「これも使えます。
ともかく早め早めが大事でございます。
家に持って帰りましょ」 |
しゅっしゅっ
|
北小岩 |
「できました。
これぐらい大きいものを
つくっておけば、
同じ轍を踏むことはないでしょう」 |
いったい何の話だろうか。
実は昨年の12月、サンタクロースからのお恵みを
あてにしていた北小岩くんと先生であったが、
セットしておいた靴下が汚く、
穴が開いていたせいで
サンタさんは入れてくれなかったらしいのだ。
|
北小岩 |
「ですから、今年は早めに
美しく大きめのものをつくりました。
布は拾ったものですが、
ちゃんとしております。
去年は家の中に置いておきましたが、
今冬は少し離れたところに
仕掛けようと思うのです」 |
弟子は5時間ほど歩き、
田園風景が広がる場所にたどり着いた。
|
北小岩 |
「むっ、
今赤い服を着たふとっちょな方が
通り過ぎました。
サンタさんに違いありませんね。
そうでございます。
今から予約しておけば、もしかすると、
想定しているより数倍の金銀が
もらえるのではないでしょうか」 |
ダッシュをかけ呼びかける。
|
北小岩 |
「お待ちください!」
|
サンタ |
「えっ?」 |
ドボーン
よそ見をしたため、
ふとっちょは肥溜めに落ちてしまった。
|
北小岩 |
「大丈夫でございますか?」
|
サンタ |
「大丈夫なわけないだろ。
今年のプレゼントが台無しだ。
しょうがねえ、全部やるよ」
|
ドサッ
|
北小岩 |
「うわ〜」 |
茶色くなった袋をなんとか避けたその時だった。
|
女 |
「あんた、
あの人のことが好きなんでしょ!」
|
男 |
「そんなことねえよ」
|
女 |
「ウソつかないでよ!
キ〜ッ!!」
|
男 |
「うわ〜」 |
女は茶色くなった袋をつかみ、男の顔面にぶつけた。
|
北小岩 |
「どうしたのでしょう」
|
サンタ |
「嫉妬だね。
近頃この町には嫉妬が多いから、
俺も心配して今年のプレゼントは
嫉妬解消商品にしようと
思ってたんだよ。
あそこを見てごらんよ」 |
立小便をしているおっさんがいた。
|
おっさん |
「お前いいよな。
人をすっきりさせてくれるし、
湯気を立ててあたたかい気持ちに
させてくれるしな。
俺なんかよ」 |
ザッザッザッ
地上の小便に向けて、砂を蹴った。
|
サンタ |
「おっさんは、
自分の小便に嫉妬してるんだよ」
|
北小岩 |
「・・・」
|
今年もまた、北小岩くんと先生のところには、
プレゼントは届きそうもない。
それにしても、今日の一連の出来事は、
いったい何なのだろうか。
どうでもいいことばかりなのは、間違いないのだが。 |