KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の四百弐拾六・・・嫉妬

北小岩 「早いもので、もう12月でございますね」

さっ

北小岩 「この布は、使えます」

ささっ

北小岩 「これも使えます。
 ともかく早め早めが大事でございます。
 家に持って帰りましょ」

しゅっしゅっ

北小岩 「できました。
 これぐらい大きいものを
 つくっておけば、
 同じ轍を踏むことはないでしょう」

いったい何の話だろうか。

実は昨年の12月、サンタクロースからのお恵みを
あてにしていた北小岩くんと先生であったが、
セットしておいた靴下が汚く、
穴が開いていたせいで
サンタさんは入れてくれなかったらしいのだ。

北小岩 「ですから、今年は早めに
 美しく大きめのものをつくりました。
 布は拾ったものですが、
 ちゃんとしております。
 去年は家の中に置いておきましたが、
 今冬は少し離れたところに
 仕掛けようと思うのです」

弟子は5時間ほど歩き、
田園風景が広がる場所にたどり着いた。

北小岩 「むっ、
 今赤い服を着たふとっちょな方が
 通り過ぎました。
 サンタさんに違いありませんね。
 そうでございます。
 今から予約しておけば、もしかすると、
 想定しているより数倍の金銀が
 もらえるのではないでしょうか」

ダッシュをかけ呼びかける。

北小岩 「お待ちください!」
サンタ 「えっ?」

ドボーン

よそ見をしたため、
ふとっちょは肥溜めに落ちてしまった。

北小岩 「大丈夫でございますか?」
サンタ 「大丈夫なわけないだろ。
 今年のプレゼントが台無しだ。
 しょうがねえ、全部やるよ」


ドサッ

北小岩 「うわ〜」

茶色くなった袋をなんとか避けたその時だった。

「あんた、
 あの人のことが好きなんでしょ!」
「そんなことねえよ」
「ウソつかないでよ!
 キ〜ッ!!」
「うわ〜」

女は茶色くなった袋をつかみ、男の顔面にぶつけた。

北小岩 「どうしたのでしょう」
サンタ 「嫉妬だね。
 近頃この町には嫉妬が多いから、
 俺も心配して今年のプレゼントは
 嫉妬解消商品にしようと
 思ってたんだよ。
 あそこを見てごらんよ」

立小便をしているおっさんがいた。

おっさん 「お前いいよな。
 人をすっきりさせてくれるし、
 湯気を立ててあたたかい気持ちに
 させてくれるしな。
 俺なんかよ」

ザッザッザッ

地上の小便に向けて、砂を蹴った。

サンタ 「おっさんは、
 自分の小便に嫉妬してるんだよ」
北小岩 「・・・」


今年もまた、北小岩くんと先生のところには、
プレゼントは届きそうもない。
それにしても、今日の一連の出来事は、
いったい何なのだろうか。
どうでもいいことばかりなのは、間違いないのだが。

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2012-12-02-SUN

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