KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の四百四拾九・・・交わる

丑三つ時。

小林先生の目がパチッ。

北小岩くんの目がパチッ。

小林 「今、パチッという音が聞こえたな。
 お前もしかしたら、
 目が覚めたんやろ」
北小岩 「さすがでございます。
 確かにわたくし、
 目が覚めております」
小林 「いったん起きると、
 なかなか眠れんもんや」
北小岩 「そうでございます。
 今から歩けば、
 随分遠くまで行けますね」
小林 「出立しよか」

師弟はそのまま12時間歩き続けた。

北小岩 「日が高いうちに、海に着きましたね」
小林 「ひさしぶりや。砂浜にでも寝転ぶか」
北小岩 「ふわ〜、気持ちいいでございます」

ザブーン ザブーン ・・・

小林 「むっ!
 今何か、聞こえんかったか」
北小岩 「ザブーン ザブーンという音が
 聞こえておりました」
小林 「まだまだ修行が足りんな。
 耳の穴おっぴろげてみい」

ザブーン ザブーン アハーン

小林 「どや!」
北小岩 「はい!
 波のピストン運動に合わせ、
 よがり声のようなものが
 聞こえてまいりました」

小林 「やはりあの噂はほんとうだったか」
北小岩 「と申しますと?」
小林 「世の中では今この時も、
 様々なものが交わっとる」
北小岩 「きっとそうでございましょうね」
小林 「以前、知り合いの
 なんでも博士が言っとった。
 それによると、
 交わっとるのは動物だけやない」
北小岩 「もしや!」
小林 「そのもしやや。
 海も他の海と交わり、
 気持ちのええ思いをしとる。
 事によっては、
 海の赤ちゃんが生まれることもある。
 海だけやない。
 土や砂、石や空気なども、
 交わりの疑いがある」
北小岩 「わたくし、
 あそこの土の声も聞いてみます!」

ダッシュした弟子が、土に耳をつけた。

ツチ ツチ イク〜ン

北小岩 「やはり、土もそうでありました。
 確信はなかったのですが、
 つちとちつは言葉が
 とても似ておりますので、
 何か関係があるのではと
 思っておりました」

弟子の最後の言はともかく、
交わっていないように思われていたものが交わり、
時に子どもまでつくっていることは、
注目に値するかもしれない。

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2013-05-12-SUN

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