小林 |
「ほのかにいい香りがせんか」
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北小岩 |
「そうでございますね」
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小林 |
「酔いの世界に誘われそうやな」
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北小岩 |
「町の御隠居さんが、
梅酒の壺を持って
立っております」
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町の
御隠居
さん |
「どうだね、
先生と北小岩さんも一杯」
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北小岩 |
「ありがとうございます」
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はたから見るとしょ〜もない師弟なのであるが、
人畜無害と目されているせいか、
やさしくしてくれる町の人たちは意外に多いのだ。
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小林 |
「しみるな」
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北小岩 |
「そうでございますね。
あっ、まずいでございます。
あちらから、町一番の屁が臭い男、
臭屁嗅瓦斯(くさっぺかがす)さんが
やってまいります」
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臭屁氏は速度を上げて近づいてきたため、
二人は逃げることができない。
ぶふぉ〜〜〜ん!
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北小岩 |
「うげ〜〜〜!」
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小林 |
「もはやこれまでか!」
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北小岩 |
「?」
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小林 |
「へんやな」
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北小岩 |
「そうでございますね」
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小林 |
「確かに臭い。
ただ、臭いだけやない」
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北小岩 |
「わたくしたち、
梅酒で気分が
よくなっているのでございますが、
拍車をかけて心地よい酔いが
深まってくる気がいたします」
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「気づいたかね、諸君!」
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小林 |
「誰や、お前は」
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「僕はね、いろいろなものにアルコールを入れて、
日本をほろ酔いにしている
『アルコールマン』だよ。
彼の屁にも、アルコールを混ぜて、
いい感じにしておいたのさ」
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北小岩 |
「そうでございましたか。
確かに今までですと
屁臭さんの屁をたしなむと、
卒倒せざるを得ませんでした」
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小林 |
「しかし、
今は程よく身体が火照っとるな」
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アルコー
ルマン |
「そうでしょ。
屁にアルコールを含ませるだけで、
時代が変わるんですよ。
確かボブ・ディランも、
時代は変わると歌っていましたね」
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意味が分からないし、そもそもディランは
屁で時代が変わるなどとは歌っていない。
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小林 |
「むっ!
向こうから小股の割れあがった
いい女が来るで」
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北小岩 |
「頬が赤らんでいます。
少し酔っているようで
ございますね。
大丈夫ですか」
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小股の
割れ
あがった
いい女 |
「彼氏のたまたまを
なめなめしていたら、
酔っぱらっちゃって」
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北小岩 |
「何があったので
ございましょうか」
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小林 |
「貴様の仕業か?」
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アルコー
ルマン |
「僕がアルコールを
塗っておいたんだよ。
いうなれば、
ウイスキーボンボンみたいな
ものかな」
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ややもするとカタいといわれがちな日本人。
巷間では、
カタいのはあそこだけで十分との意見もある。
様々なものにアルコールを含有させることで
ほろ酔い気分にし、
人々の心をやわらげるアルコールマン。
このような男が、これからの日本の鍵を
握っている気がしないでもないが、
大多数の人は賛同しないであろう。 |