しとしと
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北小岩 |
「雨でございます」
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小林 |
「どうも今年は梅雨がパッとせんな」
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北小岩 |
「もっと雨乞いをしたほうが、
よろしいのでございましょうか」
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小林 |
「その考えに落とし穴があるな」
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北小岩 |
「そうでございますか」
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「雨さん、もっと降って!」
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北小岩 |
「向こうで幼子が、
雨さんに声を掛けておりますが」
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小林 |
「甘いな。
自分の乳首に指を当てて、
雨が何を言われたらうれしいか
考えてみい」
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北小岩 |
「あっ!」
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小林 |
「わかったか」
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北小岩 |
「はい!」
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小林 |
「ほな、
天に向かって大声だしてみい!」
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北小岩 |
「雨さん!
あなたのおちんちんは、
とても大きいです!!」
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小林 |
「ええやないか!
たたみかけていこか!!」
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北小岩 |
「雨さん!
あなたのおちんちんは、
トーテムポールも
びっくりでございます!!」
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小林 |
「その調子や!」
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北小岩 |
「雨さん!」
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ジャバ〜〜〜ン!
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北小岩 |
「いきなり豪雨が!!」
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「お前らでっけえ声で
ちんちんがどうしたのと
わめいてるんじゃねえよ!
小さい子どもだって聞いてるだろ!」
アパートの二階から、
良心的な人がバケツで水をかけただけであった。
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小林 |
「しゃあない、場所をうつすか」
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北小岩 |
「そうでございますね」
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その刹那。
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とある
男 |
「うわ〜〜〜っ!」
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ジャバ〜〜〜ン!
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小林 |
「どうしたんや」
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北小岩 |
「わたくしと同じように、
雨のおちんちんをほめちぎって
水を浴びせられたのかもしれません」
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とある
男 |
「そうじゃありませんよ。
突然、糞に頭を踏まれたのです。
それを見ていた二階の人が、
水をかけて流してくれたのです」
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小林 |
「どういうこっちゃ」
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流され
た糞 |
「この人は、自分の不注意で年中、
私たちを踏むんですよ。
そのたびにクソッ!
と憤るのですが、
私たちにすれば踏まれた上に蔑まれ、
たまったもんじゃありません。
ですから踏まれ仲間たちと
組合をつくって、
みんなでくっついて大きくなって、
この人の頭を踏んだのです。
そうしたら水で流され・・・。
さようなら」
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糞は完全に流れていった。
確かに人は、糞、犬の尻尾、体重計など、
様々なものを踏んで過ごしている。
時に彼らが徒党を組んで猛反発しても、
仕方がない気もする。
しかし、冷静に考えてみれば、
冷静に考えるほどのことではないことに
気づくであろう。 |