小林 |
「もう7月か」
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北小岩 |
「早いものでございますね」
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小林 |
「今年の上半期、
なんかええ想い出はできたか」
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北小岩 |
「先日の事なのですが、
わたくし昼寝をしておりまして、
放屁する夢を見たのでございます」
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小林 |
「ほほう」
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北小岩 |
「プッと鳴った瞬間に
起きたのですが、
実際に起きてみると、
確かに臭いのでございます」
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小林 |
「それで」
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北小岩 |
「夢と現実がひとつになった
瞬間でございました」
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小林 |
「・・・」
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ただ寝屁をこいただけのことであろう。
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小林 |
「想い出というには、
寂しすぎるな。
もっとええ想い出、
つくりにいこか」
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北小岩 |
「そのような軍資金を
お持ちなのですか」
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小林 |
「公園の前に
マイクロバスが止まっとった。
町内会の慰安旅行で、
工房に行くという情報をつかんどる。
無料らしいで」
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北小岩 |
「パン工房でございましょうか」
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小林 |
「多分食いもんやろ」
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北小岩 |
「心とお腹の想い出づくり。
一石二鳥でございますね」
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タダほど高いものはないというが、
果たしてバスに乗り込んだ二人は。
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小林 |
「早く着かんかな。
腹減ったわ」
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キキーッ
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北小岩 |
「到着したようでございます。
あれっ?
『局所陶芸工房』と
書かれております」
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局所陶芸
工房の人 |
「さあ、どうぞ。こちらへ」
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小林 |
「どういうこっちゃ」
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局所陶芸
工房の人 |
「私どもの工房は、
魂のこもった器制作を
モットーにしております。
あなたは茄子の器を、
あなたは玉子立てを」
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小林 |
「俺が茄子の器?」
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北小岩 |
「わたくしは
玉子立てでございますか」
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局所陶芸
工房の人 |
「お二人ともパンツを脱いで、
粘土の上にお一人は竿を、
もう一人は金玉を二つ
置いてください」
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小林&
北小岩 |
「?」
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いつの間にか二人の後ろに力士が立っていて、
竿と金玉の上に手を置いた。
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力士 |
「どすこ〜い!」
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推定200キロの全体重を両の手にかけた。
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小林 |
「うぎょ〜〜〜!」
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局所陶芸
工房の人 |
「あなたの竿の形に
へこみましたので、
それを焼けば
茄子を置く器になります。
ブツがあまりに小さいので、
小茄子ぐらいしか置けませんが」
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北小岩 |
「ぐわ〜〜〜!」
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局所陶芸
工房の人 |
「あなたの玉はかなりご立派なので、
LLサイズの玉子が
二つ立つ器ができますね」
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食べ物にありつけるかと思い
参加した二人であったが、
先生は竿が折れ、弟子は玉が潰れた。
ひと月後に焼き上がった器が
送られてきたのだが、おぞましいものであった。 |