北小岩 |
「えいっ!」
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どん
ぶう〜〜〜ん
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小林 |
「回り始めたな」
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北小岩 |
「涼しいでございます」
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小林 |
「さすがに文明の利器は違うな」
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北小岩 |
「この世の楽園とでも申しましょうか」
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小林 |
「そやな。
お互いにうちわで扇ぎっこしてもな」
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北小岩 |
「すぐに限界が来てしまいますし」
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先生宅には羽が一枚だけ残った扇風機がある。
このところ調子が悪く、
動かなくなっていたのだが、
弟子が喝を入れたところ、
ゆっくりではあるが復活したのである。
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小林 |
「常に回り続けることは、
人間にとっても大切なことや」
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北小岩 |
「まったく、
その通りだと思います」
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ぶう〜ん ぶぶぶぶ
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小林 |
「むっ、様子が変や」
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北小岩 |
「不吉な予感がいたします」
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ぶっぶっぶっ ぽと
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北小岩 |
「たった一枚しかない羽が・・・」
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小林 |
「しゃあない、
こういう時は図書館で涼もか」
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二人が涼をとる頼みの綱が図書館である。
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小林 |
「たまには図鑑でもみるかな。
むっ、
超巨大なイカがクジラと闘っとる!」
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北小岩 |
「海で生きるのも、
大変なのでございますね」
「大変なのは、己も同じじゃよ」
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北小岩 |
「あなた様は?」
「わしは、『結構何でも知ってる男』だな」
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北小岩 |
「そうでございますか。
ところで、
己も同じということですが」
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結構
何でも
知って
る男 |
「君たちが眠りに落ちている間、
金玉が死闘を
繰り広げていることを知らないだろ」
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北小岩 |
「存じません」
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結構
何でも
知って
る男 |
「例えば『マンリキ』という
生き物がおってな、
ギリギリギリギリ締め上げ
つぶそうとするのだよ」
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北小岩 |
「どうなってしまうので
ございましょうか」
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結構
何でも
知って
る男 |
「陰毛の力を借りて、
マンリキをくすぐって
力が入らなくするんじゃよ」
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北小岩 |
「そうでございますか。
危機一髪ですね。
他にはどのような」
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結構
何でも
知って
る男 |
「『たまころがし』も
恐ろしい敵じゃな。
転がすことで金玉の目を回す。
ふらふらしたところをパックンじゃ」
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北小岩 |
「身の毛がよだちますね」
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結構
何でも
知って
る男 |
「『たまけずり』もやっかいじゃ。
かつおぶし削りのような
歯を持っていて、
じゃりじゃり削るんじゃ」
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北小岩 |
「うわあ!」
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この地球上では、それぞれが生き延びるために、
日々過酷な闘いの連続である。
金玉は他の生き物にとって、美味なる食べ物なのだ。
睡眠中に金玉がどれほど命を削って闘っているか、
たまには思いを馳せたほうがよいかもしれません。 |