小林 |
「師走やな」
|
北小岩 |
「そうでございますね。
師が走ると書きますが、
先生のような大師でも
走るのでございますか」
|
小林 |
「もちろん、全力疾走や」
|
北小岩 |
「さすがに時流を
とらえていらっしゃいますね。
で、どのようなご用件で
走られたのでございますか」
|
小林 |
「20キロほど先にあるゴミの集積所に、
超ウハウハのエロ本が
大掃除で出されているという情報を
得てな。
今まで出したことのない速度の
韋駄天で、そこに向かったんや」
|
北小岩 |
「戦果はあったのでございますか」
|
小林 |
「一瞬早く、
地元の中学生が手に取った」
|
北小岩 |
「残念ですね」
|
小林 |
「俺もあきらめるわけにはいかんから、
引っ張り合いになってな。
ガキがひっかいてくるから、
噛みついてやったわ。
エロ本は結局、
びりびりに破れてしまったんやがな」
|
大人気のかけらもない。
いい年こいてクソガキと真剣に
エロ本の取り合いをするなど、言語道断である。
|
小林 |
「お前は師ではないが、
走ったか」
|
北小岩 |
「わたくしは走っておりませんが、
古くからの友人たちが
それぞれ商売を始めたらしいのです。
彼らは人生を走っていると
いえるのではないでしょうか」
|
小林 |
「エロ本屋でも始めたんか」
|
北小岩 |
「いえ、
一人はクソがつくほど
真面目でしたので、
そういうことはないと存じます。
今から二人の活躍を見に
うかがおうかと思うのですが、
先生はいかがいたしますか」
|
小林 |
「行ってやってもええで」
|
ぷ〜っ! ぷ〜っ!
子弟は己の屁を動力に、
『こんま山』まで疾走した。
|
小林 |
「こんな山奥におるのか」
|
北小岩 |
「そうでございます」
|
「あ〜、おしっこもれちゃう。
どうしよう」
股間をおさえてうずくまった女性がいる。
「どうぞ、お乗りください!」
|
北小岩 |
「わたくしの友人でございます。
何をしているのでございますか」
|
友人A |
「山でトイレがなくて
困る人がいるだろ。
だから、便所屋さんをしてるんだよ」
|
北小岩 |
「肩にかついでいるものは何ですか」
|
友人A |
「駕籠状の一人神輿なんだけど、
中が便所になっているんだよ。
そこに入って用を足して
もらっている間、
俺がわっしょいわっしょいと
勢いをつけてあげるんだ」
|
女性 |
「頼みます!」
|
友人A |
「中へ入ってください。
それわっしょいわっしょい」
|
じょぼじょぼ〜
|
小林 |
「・・・」
|
北小岩 |
「先生、
町にもう一人友人がおりますので、
そちらに行ってみましょう」
|
山を下りて駅に向かうと。
「ぴっかぴかに磨きますよ!」
|
北小岩 |
「あっ、久しぶりでございます。
靴磨き屋さんを始めたので
ございますか」
|
友人B |
「靴じゃないんだな」 |
客 |
「いいかい。
今日彼女と初めての夜を
過ごすんだ。
頼むよ!」
|
友人B |
「お任せください!」
|
客はパンツとズボンを同時におろすと、
台の上にイチモツを置いた。
友人Bは特殊なオイルをつけて、
キュッキュッと音を立ててブツを磨いた。
新商売を始めた北小岩くんの友人たち。
世の中の役に立っているような、
立っていないような。
現段階では判断が難しいところである。 |
|
|