コンコン コンコン
「入ってますか」
「入ってますよ」
トイレの話ではない。
先生宅を訪れた要人は、
このような合言葉を用いるのである。
こたえた男は、弟子の北小岩くんであった。
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北小岩 |
「おひさしぶりでございます。
社長様は大変お忙しいと存じますが、
今日はいかがなされましたか」
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町の
社長 |
「懇意にしている会社が
都心にあるのだけれども、
そこの社長が
エゲツないエロ本が好きでねえ。
逸品を送ってくれというのだが、
ブツがあまりにエゲツなさすぎて、
とてもじゃないが送れないんだよ。
万が一ということもあるからね。
そこで先生とあなたに
届けてほしいんだ。
信用できる人にしか頼めないだろ」
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北小岩 |
「そうでございますか」
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町の
社長 |
「先生とあなたは、
社会的な信用はゼロというか、
マイナスといったほうが
当たっていると思うが、
エロ本の運搬に関しては
これほどに信用できるコンビは
いないだろう」
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北小岩 |
「ありがとうございます」
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町の
社長 |
「多分あなたたちのことだから、
10時間ぐらい歩いて
行くつもりだろうが、
それもまたリスクがともなう。
交通費とお駄賃を渡すから、
必ず電車で行ってくれ」
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社長がお札入りの封筒を出した刹那、
現れたのは。
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小林 |
「こっちの方向から、
金の匂いがするんやが」
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北小岩 |
「社長さんから
エロ本運搬のお仕事と、
お金をいただきました」
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小林 |
「そうだったか」
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町の
社長 |
「よろしくおねがいんもう〜〜〜!」
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小林 |
「しょうちんこ〜〜〜!」
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ともかく師弟は駅に向かい、電車に飛び乗った。
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北小岩 |
「以前と吊り革の感じが
違っている気がいたします」
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小林 |
「確かにな」
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女性 |
「キャー、痴漢〜〜〜!」
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ぎゅい〜〜〜ん
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北小岩 |
「吊り革が生き物のように
動き出しました!」
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痴漢 |
「うっ!」
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吊り革は痴漢のイチモツをとらえると、
一気に輪を縮めて締め付け、
そのまま釣り上げた。
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痴漢 |
「うお〜〜〜!
千切れる〜〜〜!!」
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一方、毎日毎日お年寄りや
赤ちゃんを連れたおかあさんに
親切な男子中学生には。
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男子
中学生 |
「あれ?吊り革が下りてきた」
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いつの間にか、
輪っかの部分に特殊レンズがついている。
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男子
中学生 |
「なんだろ、のぞいてみよう。
うわ〜〜〜!」
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なんと、前に座っているOLの
スカートの中が透けて見える
特殊なレンズであった。
吊り革は進歩をとげ、
ある時は悪者を懲らしめ、
またある時は善人にいい思いをさせている。
今後も注目していきたい。 |