すやすやすやすや
赤ちゃんのような寝息をたてているのは、
弟子の北小岩くんであった。
「・・・むひゅ〜〜〜」
尻子玉を抜かれたようななさけない寝言は、
やはり弟子の北小岩くんであった。
「まっ、まさか!」
いきなり、はっきりしすぎた寝言に変わった。
「うっ、うお〜〜〜!」
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小林 |
「どうしたんや!」
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弟子の絶叫を聞き駆け付けた師であった。
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北小岩 |
「あっ、先生。
血相を変えて、
いかがなさったのでございますか」
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小林 |
「何とぼけたことを言っとるんや!
お前が叫ぶから、
強盗でも入ったのかと
思ったんやろ!!」
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北小岩 |
「大変申し訳ございません!
実はわたくし、
夢を見ていたのでございます」
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小林 |
「どうせまたくだらん夢とは思うが、
言うてみい」
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北小岩 |
「一枚の葉もついていない、
やせた木がございました」
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小林 |
「ほほう。
お前にしちゃ、哲学的やな」
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北小岩 |
「その木の枝に、
わたくしのイチモツが
ぶらさがっていたのです。
それも二つ折りにぐんにゃりして」
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小林 |
「まるでサルバドール・ダリの
『記憶の固執(柔らかい時計)』
のようや。
そういやこの間、
新聞配達のにいちゃんが
美術館のチケットを
二枚落としていったんやが、
拾っといた。
これもなんかの縁や。
行ってみよか」
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縁というより、縁もゆかりもないと言った方が
正しいのではあるが、
ともかく師弟は町中央に位置する美術館へ。
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小林 |
「ここに来るのも久しぶりやな」
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北小岩 |
「そうでございますね。
女性のお客様が多いですね」
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ピ〜〜〜〜
突然、警報音が鳴り響いた。
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美術館
警備員 |
「ただ今から、
展示されている芸術品を諌めます。
目隠しをお渡しするので、
しばらく目を覆ってください」
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小林 |
「なんのこっちゃ」
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美術館警備員の人たちが、
絵画や彫刻にライオンが牙を剥いてる
巨大な写真を見せている。
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小林 |
「お前ら、みんなを目隠しして、
何をたくらんどるんや!」
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美術館
警備員 |
「あっ、
見つかってしまいましたか。
実をいうと、
近頃『男が描かれた絵画』や、
『男の彫刻』のイチモツが、
ふくらんで大きくなる時間帯が
ありまして」
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北小岩 |
「なんと!」
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美術館
警備員 |
「それで怖い写真を見せて
萎えさせているのです」
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北小岩 |
「ここは女性が多い美術館ですから、
そのままふくらませとくという方法も
あるのではございませんか」
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美術館
警備員 |
「それも考えたのですが・・・。
やはりそれでは、
美術館ではなく、
秘宝館になってしまうのですね」
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あなたがもし、どこかの美術館で
目隠しされたとしたら、
絵画や彫刻の男が股間を
ふくらませていることを疑ってくださいね。 |