北小岩 |
「連休というのに、
まったく代わり映えいたしませんね」
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小林 |
「そやな。
俺たちは、万年365連休やからな」
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北小岩 |
「連休王といっても
過言ではございませんね」
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小林 |
「とはいえ、
ぼちぼち男らしい旅に出たいな。
川を遡ってどこまでも
歩いて行くというのはどや」
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北小岩 |
「さすらい人のようで、
カッコいいでございます!」
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師弟は何を思ったか、各自尿瓶を背負い、
町を流れる川を遡り始めた。
それから12時間ほど時がたち。
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小林 |
「だいぶ上流まで来たな」
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北小岩 |
「町とは川の表情も
異なっておりますね。
向こうで釣りの大会が
催されているようです」
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小林 |
「ほほう。
毛バリの大会やな。
ここいらへんには、
幻の魚がおると聞いたことがある」
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北小岩 |
「あそこにスレンダーな
美しい女性釣り師がいらっしゃいます」
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美人
釣り師 |
「釣れないわね。
このままじゃ、
優勝賞金69万円を
手に入れられないわ。
69は私にもなじみのある数字だから、
絶対勝てるはずなんだけど。
針がいけないのかしら」
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自作の毛バリの感触を、指で確かめてみる。
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美人
釣り師 |
「リアルじゃないんだろうな。
こうなったら、奥の手しかないわね」
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ズボンの奥に手を入れると。
ブチッ!
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美人
釣り師 |
「痛っ!
でも、がんばらなきゃ。
ここが勝負よ」
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ブチッ!
ブチブチブチブチ!
ブチブチブチブチブチブチブチ!
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美人
釣り師 |
「薄くなっちゃったけど、
これだけあれば
いくつも毛バリがつくれるわ」
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素早く針に毛を巻き、瞬間接着剤でつけていく。
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美人
釣り師 |
「一気にいくしかないわね」
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釣り糸に何本も針をつけて、
艶っぽい動作で水面に投げる。
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男釣り
師A |
「あのコ、
自分の毛で毛バリをつくったよな」
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男釣り
師B |
「あんなかわいいコのブツが。
俺、もう我慢できねえよ」
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男釣り
師A |
「俺もだよ」
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ばしゃん ばしゃん ばしゃん
男釣り師たちが、次々川に飛び込んだ。
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美人
釣り師 |
「あれっ?
男の人たちが毛バリに食いついてる。
でも、お魚を釣らなきゃ
優勝できないじゃない」
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その時だった。
急流で男たちのズボンとパンツが流された。
あらわになった男の玉に、
どこから現れたのか幻の魚たちが食いついた。
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小林 |
「男の玉を見ると
口に含む珍魚『タマフクミ』やな」
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美人釣り師はここぞとばかりに竿を引いた。
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北小岩 |
「男の方々の玉に、
幻の魚がかかっております!」
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見事に優勝した美人釣り師であった。
だが、阿呆師弟が川を遡るという
ロマンあふれる旅に出たところで、
遭遇するのはこのように
どこかイカ臭い出来事ばかりであろう。 |