チカチカチカ
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小林 |
「繁華街はひさしぶりやな」
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北小岩 |
「目がちかちかいたしますね」
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小林 |
「俺も若い頃は、
ここいらの酒場でよく飲んだもんや」
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北小岩 |
「先生はその頃、
お金を持っていたのでございますね」
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小林 |
「いや。
今と同じや」
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北小岩 |
「ということは、
所持金が
2円だったのでございますか」
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小林 |
「そやな」
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北小岩 |
「2円でよく遊べましたね」
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小林 |
「そのことか。
俺は若い頃、
エロ本の目利きになるために、
過酷な修行を積んどった。
それを目の当たりにして
感銘を受けた実業家が、
よく連れて行ってくれてな」
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先生がどんな修行に身を置いていたのかは
わからない。
しかし、対象がどのようなものであっても、
懸命に生きる者には、
必ず支援者が現れるものである。
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北小岩 |
「先生が繁華街で
幅を利かせている時、
楽しい思い出はございましたか」
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小林 |
「思い出というほどではないが、
流しで極端に
イチモツのでかい男がおってな」
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北小岩 |
「?」
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小林 |
「ギターも歌も
とにかく下手やった」
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北小岩 |
「それと巨根と
どう関係するのでございますか」
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小林 |
「いつも半ズボンをはいっとってな。
曲のサビになると
わきからイチモツが
だらんと垂れ下がってきて、
客のグラスに入ってしまうんや」
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北小岩 |
「げげっ!」
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小林 |
「水割りならぬ、
ウイスキーのちんぽ割りやな。
何回かそれをやってしまい、
当然クビになったわな」
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北小岩 |
「今、
何をしてらっしゃるのでしょうか」
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小林 |
「何をしてるんかな。
むっ、ヤツや! 後を追うか」
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元流しの男は、住宅街へと向かうようだ。
草木も眠る丑三つ時。
どこかの家から声が聞こえる。
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どこかの
家の妻 |
「蚊がいるじゃない!
あんたとってよ!!」
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どこかの
家の夫 |
「そんなこと言ったって、
眠くて蚊なんかとれねえよ」
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どこかの
家の妻 |
「蚊取り線香をたくと煙くなるから、
ちゃんととってよ!」
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元流しの
男 |
「え〜、
蚊取りの流しでございます〜。
一匹千円で蚊を退治しま〜す!」
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どこかの
家の夫 |
「蚊取り屋さん、頼むよ!」
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元流しの
男 |
「へ〜い!」
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先生と弟子は、
数センチ開いた窓から中をのぞいてみた。
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北小岩 |
「ちんちんを出しました。
確かにかなりデカいです」
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ぷ〜〜〜ん!
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北小岩 |
「あっ、
蚊がブツにとまりました!」
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バシッ!
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どこかの
家の妻 |
「ありがとう!
頼りになるわね。
でもどうしてすぐに
蚊がとまったのかしら」
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元流しの
男 |
「いつもちんちんに
酒を飲ませてるんですよ。
そうすると、
蚊がとまりやすくなるもんでね」
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元流しの男は、己のモノを磨いて、
第二の流し人生を歩んでいるようだ。
進もうとした道でつまづいても、
横にチャンスは転がっている。
肝に銘じたいことである。 |