KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の伍百拾八・・・秋の花火

小林 「過ごしやすい季節になったな」
北小岩 「そうでございますね」
小林 「ところでお前は、
 夏が終わってしまった
 海の気持ちを考えたことがあるか」
北小岩 「ございません」
小林 「夏には裸同然の女が
 大量に入ってくるわけや。
 海も興奮せざるを得ないやろ」
北小岩 「確かにそうでございます!」
小林 「海にとって、
 エロに彩られた季節が
 去ってしまったわけや。
 嘆き悲しんでいることやろな」

何の情緒もない二人の会話に、価値などない。

リリリリリッ

小林 「秋の風流と言えば、
 虫たちの競演や」
北小岩 「はい。
 以前、先生は虫の音を聴いて、
 『草むらで乳繰り合おうったって、
  俺が許さへんで〜〜〜〜』
 と言って
 暴れたことがございましたね」
小林 「懐かしい思い出やな」
北小岩 「先生も随分
 大人になられたのですね」
小林 「まあな。
 そういえば今年、
 おなごの浴衣姿を見たか」
北小岩 「見損なってしまいました」
小林 「俺もや。
 電信柱に花火の情報が
 貼ってあったな」
北小岩 「『今日は秋の悲しき花火大会』と
 書いてありました」

何が悲しいのかは不明であるが、
ともかく二人は浴衣のおなごを求めて
会場へと走った。

小林 「浴衣のおなごどころか、
 人影もまばらやな」
北小岩 「そうでございますね。
 あそこに係のおじいさんが
 おります。
 うかがってみます。
 もしもし、おじいさま。
 悲しき花火大会とは、
 どのようなものなのですか」
係の
おじい
さん
「夏の恋に破れ、
 金玉が不要になった男たちが
 おるだろ。
 その金玉を花火にするのじゃよ。
 おっ、点火されるな」

恋に破れた男Aが、台の上に横たわっている。
パンツのわきから玉が
だら〜んとたれているが、
そこに花火師が点火した。

ひゅるるるる〜〜〜〜〜〜

金玉はだらしない音を立てて
打ち上げられたものの、
高さ1メートルのところで、
青白い光を出して消滅した。

北小岩 「あまりにはかないでございます」

小林 「あっちを見ろ」

そこには恋に破れた男Bが
なさけない顔をして立っている。
やはりパンツのわきから玉が
だら〜んとたれている。

花火師が点火すると。

ちっちっちっちっ

北小岩 「線香花火のようでございます」

しかし、線香花火の玉が
すぐに落ちてしまうように、
金玉花火の玉もすぐに落ちてしまった。

恋に
破れた
男B
「あちい!!!!!」


玉は男の足に落ち、男は大やけどをおった。
こんなに悲しい花火大会が、
この世にあるのですね。

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2014-09-07-SUN

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