小林 |
「過ごしやすい季節になったな」
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北小岩 |
「そうでございますね」
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小林 |
「ところでお前は、
夏が終わってしまった
海の気持ちを考えたことがあるか」
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北小岩 |
「ございません」
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小林 |
「夏には裸同然の女が
大量に入ってくるわけや。
海も興奮せざるを得ないやろ」
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北小岩 |
「確かにそうでございます!」
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小林 |
「海にとって、
エロに彩られた季節が
去ってしまったわけや。
嘆き悲しんでいることやろな」
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何の情緒もない二人の会話に、価値などない。
リリリリリッ
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小林 |
「秋の風流と言えば、
虫たちの競演や」
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北小岩 |
「はい。
以前、先生は虫の音を聴いて、
『草むらで乳繰り合おうったって、
俺が許さへんで〜〜〜〜』
と言って
暴れたことがございましたね」
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小林 |
「懐かしい思い出やな」
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北小岩 |
「先生も随分
大人になられたのですね」
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小林 |
「まあな。
そういえば今年、
おなごの浴衣姿を見たか」
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北小岩 |
「見損なってしまいました」
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小林 |
「俺もや。
電信柱に花火の情報が
貼ってあったな」
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北小岩 |
「『今日は秋の悲しき花火大会』と
書いてありました」
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何が悲しいのかは不明であるが、
ともかく二人は浴衣のおなごを求めて
会場へと走った。
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小林 |
「浴衣のおなごどころか、
人影もまばらやな」
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北小岩 |
「そうでございますね。
あそこに係のおじいさんが
おります。
うかがってみます。
もしもし、おじいさま。
悲しき花火大会とは、
どのようなものなのですか」
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係の
おじい
さん |
「夏の恋に破れ、
金玉が不要になった男たちが
おるだろ。
その金玉を花火にするのじゃよ。
おっ、点火されるな」
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恋に破れた男Aが、台の上に横たわっている。
パンツのわきから玉が
だら〜んとたれているが、
そこに花火師が点火した。
ひゅるるるる〜〜〜〜〜〜
金玉はだらしない音を立てて
打ち上げられたものの、
高さ1メートルのところで、
青白い光を出して消滅した。
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北小岩 |
「あまりにはかないでございます」
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小林 |
「あっちを見ろ」
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そこには恋に破れた男Bが
なさけない顔をして立っている。
やはりパンツのわきから玉が
だら〜んとたれている。
花火師が点火すると。
ちっちっちっちっ
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北小岩 |
「線香花火のようでございます」
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しかし、線香花火の玉が
すぐに落ちてしまうように、
金玉花火の玉もすぐに落ちてしまった。
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恋に
破れた
男B |
「あちい!!!!!」
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玉は男の足に落ち、男は大やけどをおった。
こんなに悲しい花火大会が、
この世にあるのですね。 |