小林 |
「朝晩、油断をすると
風邪をひきそうになるな」
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北小岩 |
「そうでございますね」
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小林 |
「今どれぐらい秋になっとるのかな」
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北小岩 |
「先っぽが入り、
行きつ戻りつしているところで
ございますかね」
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小林 |
「ほほう。
いつの間にやらお前も、
表現が巧みになってきたな」
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そんなことはない。
ゴミ置き場で拾ったエロ本か何かに
出ていた一節であろう。
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小林 |
「ところでお前は、
秋といえば何を想い浮かべるんや」
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北小岩 |
「スポーツの秋、読書の秋、
食欲の秋でございましょうか」
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小林 |
「あまりに凡庸やな。
行きつ戻りつは
ええ表現と感じたが、
まだまだやな」
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北小岩 |
「どのようにすれば、
一段上に行けるので
ございましょうか」
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小林 |
「そやな。
古くからの知り合いに、
秋に関して深く考察している
ご老人がおる。
訪れてみるか」
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二人は落ちていたイガ栗を
お互いの股間にぶつけ、
その痛みを動力としてご老人の家へ。
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北小岩 |
「ご老人様、わたくし、
秋の趣にもっと詳しく
なりたいのですが」
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ご老人 |
「わしは秋について、
もう八十年も考え続けとる。
そして、秋とは
こういうものではないかという結論を
いくつか得てな」
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北小岩 |
「さすがでございます。
ご教示いただけますか」
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ご老人 |
「スポーツの秋、読書の秋、
食欲の秋といわれるが、
それではあまりに大雑把すぎる」
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北小岩 |
「なるほど。
確かに」
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ご老人 |
「わしの結論の一つ目は、
『蟻の門渡りの真ん中あたりに
ある秋』じゃ」
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北小岩 |
「なんと!」
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ご老人 |
「見てみるのじゃ」
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ご老人は褌をほどき。
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北小岩 |
「むむっ!
あなた様の蟻の門渡りの
真ん中あたりに、
どんぐりのような模様が
浮き上がっております」
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ご老人 |
「普段は一般的な
蟻の門渡りなんじゃが、
この季節だけそうなるんじゃ」
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北小岩 |
「常人の秋を超えております」
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ご老人 |
「それからな、
『自然に抜けた陰毛の
根元の方の秋』じゃ」
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北小岩 |
「確かに抜けた陰毛の根元には、
秋の気配が色濃く
反映されております」
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ご老人 |
「そうじゃ。
これから冬に向かっていく、
そこはかとないもの悲しさ、
それが自然に抜けた陰毛の
根元にはあるのじゃな」
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北小岩 |
「わたくしとは
けた違いの考察でございます」
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小林 |
「まず、己の身体に秋を感じる。
それが基本かもしれんな」
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秋を考察して八十年のご老人の感覚。
見ならうべきところがあるような、ないような。 |