KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の伍百八拾九・・・陸釣り

小林 「俺の知り合いに
 一風変わった
 発明家がおってな」
北小岩 「先生のご友人は
 多士済々でございますね」
小林 「そいつが今、
 聞きなれない釣りを
 始めたらしくてな」
北小岩 「そうでございますか」
小林 「何でも
 陸釣りと言っとったな」
北小岩 「わたくしのような凡人には、
 それがどのようなものなのか
 見当もつきません」
小林 「発明家ならではの釣りだと
 自画自賛しとったわ」
北小岩 「ぜひ同行させていただきたく
 存じます」
小林 「今日決行するらしいから
 ついてくか」

二人は道に落ちていた破魔矢で
お互いの急所を突きあい、
その痛みを原動力として発明家の家に急いだ。

小林 「ここやな」

ガチャッ

北小岩 「出てまいりました」
小林 「どや、釣りの方は」
発明家 「ついに完成しました。
 これですよ」
小林 「むっ!」

先生がむっ! といったのもむべなるかな。
その釣竿についてここで詳述するのは
やめておこう。

発明家 「では行きましょう」

三人が向かった場所は、
公園にある大きな公衆トイレだった。

発明家 「ちょっと待っててください」

氏は大便どころに入ると、
トイレットペーパーを手に出てきた。

発明家 「準備は整いました。
 建物の裏に隠れていましょう」

しばらくすると苦し気な顔をした若者が
駆け込んできた。

苦し気な
顔をした
若者
「もっ、もれる〜!」

大便どころに入り用を足し。

苦し気な
顔をした
若者
「ふ〜、助かった。
 やばい! 紙がない」
発明家 「紙ありますから、
 上から入れますね」
苦し気な
顔をした
若者
「ありがとうございます!」


発明家は妙な釣り竿にセットされた
トイレットペーパーを回転させ、
糸を垂らすようにしゃがんでいる若者の
目の前でぶらぶらさせた。

若者はトイレットペーパーを引っ張り、
ケツを拭いたのだが。

苦し気な
顔をした
若者
「変だな、
 このトイレットペーパー。
 ケツの穴にくっついて
 離れないぞ」
発明家 「魚がかかりました!
 トイレットペーパーに
 見えますが
 これは特殊な紙で、
 絶対に破れません」

渾身の力でリールのハンドルを回す。

苦し気な
顔をした
若者
「うお〜〜〜!」


若者はお尻から釣り上げられてしまった。
こんなことばかりしている発明家なんて、
世の中に必要ありませんよね。

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2016-01-17-SUN

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