「へ〜い、浣腸だ!」
「きゃ〜〜〜!」
よい大人が何をしているのだろう。
「へ〜い、浣腸だ!」
「きゃ〜〜〜!」
聞き間違いかと思ったが、
やはり聞き間違いではなかった。
「へ〜い、浣腸だ!」
誰の声かといえば、先生の住む町の町長である。
「きゃ〜〜〜!」
町の娘の声。このような経緯もあり、
町長は浣腸長と呼ばれていた。
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小林 |
「浣腸長が何やら
ロマンチックなことを
やっとるらしいな」
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北小岩 |
「もっぱらの噂でございますね」
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小林 |
「今どき浣腸のポーズで
女を追い回して、
捕まらんのが不思議やな」
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北小岩 |
「浣腸長ならではの
かわいげみたいなものが
ございますので、
ギリギリ許されているのですね。
うらやましい限りです」
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小林 |
「俺も真似して浣腸のポーズで
女を追い回したことがあったが、
怪力女子に捕まり
そのままの指の形で両人差し指を
へし折られたことがあったな」
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北小岩 |
「その方を狙っていたわけでは
なかったですよね」
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小林 |
「そやな。
女性の場合、
ターゲットの反撃より、
周りにいる者の代理攻撃の方が
はるかに恐ろしいわな」
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北小岩 |
「ロマンチックというのは
何でしょう」
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小林 |
「町の男らが
初恋の女に再会する
手助けをしたらしいんや。
今日がその日やから、
会場に行ってみよか」
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師弟が到着すると、大の男らが号泣していた。
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大の男
A |
「ほんとに逢えるなんて。
もう、とっくの昔に
あきらめていたんだよ」
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大の男
B |
「まさか、こんな僥倖が」
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大の男
A&B |
「う〜っ、くく〜う!」
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北小岩 |
「初恋の方に惚れ抜いて
いたのでございましょう」
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小林 |
「思わずもらい泣き
しそうになるな」
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北小岩 |
「ところで
想いをよせていた方は、
どちらにいらっしゃるのでしょうか」
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小林 |
「ひと目見たいわな」
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北小岩 |
「もしもし。
無粋だとは思うのですが、
貴方様の初恋の方は?」
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大の男
A |
「ああ。ここにいるよ!」
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それは古びたエロ本であった。
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大の男
A |
「俺が初めて
お世話になった彼女さ」
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小林 |
「もう一人のやつはどうなんや」
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大の男
B |
「僕の人は、これだよ!」
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男Bが数メートル離れたところから
手にしてきたのは、
古びたダッチワイフであった。
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小林&
北小岩 |
「・・・」
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先生の町にロマンチックを
期待すること自体が間違いであった。 |