先生の住む町の裏山に、奇妙な岩が二つある。
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小林 |
「岩の割れ目から、
せつない声が漏れとるそうやな」
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北小岩 |
「行ってみましょうか」
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師弟が駆けつけると、すでに黒山の人だかり。
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北小岩 |
「考古学者がいらっしゃますね」
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小林 |
「状況について聞いてみんとな」
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北小岩 |
「考古学者さま、
今どのような具合でございますか」
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考古
学者 |
「心から邪心をのぞいて、
耳を傾けてごらんなさい」
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北小岩 |
「かしこまりました」
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考古
学者 |
「どうかな」
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北小岩 |
「・・・」
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小林 |
「お前、
毎秒どすけべなことを
考えとるから、
邪心をのぞくことができないんやろ」
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北小岩 |
「恥ずかしながら
その通りでございます。
しかし、先生の方が
醜いといえるほどいやらしいことを
継続して考えているのでは
ございませんか」
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小林 |
「甘いな。
自由自在に邪心の塊にも、
無邪心にもなれるところが
俺の偉大なところや」
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北小岩 |
「なるほど」
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しばらく時間をおいて。
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北小岩 |
「どうでございましたか」
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小林 |
「邪心の氷山のようなものが現れ、
こちらに迫ってきたわ」
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考古
学者 |
「無理に取り除こうと思うから
そうなるのです。
今までで一番いやらしことを
考えるつもりで臨んでみなさい」
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北小岩 |
「なるほどでございます。
・・・。
はっ!
そこまでいやらしいことを
考えきる能力はわたくしにはなく、
従って邪心が無い状態になりました」
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小林 |
「俺もや」
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北小岩 |
「声が聞こえてきました」
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小林 |
「もう少しよ、早く来て?」
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考古
学者 |
「つまりあそこに
『チン岩』と『マン岩』がありますが、
一マン年かけてチン岩が隆起し、
ついにマン岩の入口に
たどり着いたのです」
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北小岩 |
「そうなのでございますか」
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小林 |
「そこまで時間をかけて・・・。
見上げたもんやな」
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考古
学者 |
「しかし、チン岩の頭の部分が
マン岩に入ったとしても、
奥にたどり着くにはまた一マン年、
そして行きつ戻りつするには、
また各一マン年かかります」
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小林 |
「お前にそこまでの情熱はあるか」
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北小岩 |
「足元にも及びません」
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小林 |
「俺もチン元にも及ばんな」
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先生の町にあるチン岩とマン岩。
岩にもロマンがあることは、心に留めておきたい。 |