小林 |
「10月も半ばを過ぎたな」
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北小岩 |
「そうでございますね」
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小林 |
「彼岸も1カ月ほど過ぎたな」
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北小岩 |
「早いものでございますね」
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小林 |
「俺たちの町では、
彼岸過ぎのこの時期、
重要なことがあるのを知っとるか」
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北小岩 |
「存じません」
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小林 |
「実は俺も
長いこと忘れとったが、
急に思い出してな」
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北小岩 |
「幸いにございます」
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小林 |
「子どもの頃よく聞かされたんや」
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北小岩 |
「どのようなものでしょうか」
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小林 |
「町の奥襞に塚があってな」
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北小岩 |
「はい」
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小林 |
「今の時期は
『ひがん』ではなく
『こうがん』と呼ばれ、
塚参りをするのが
ならわしやったんや」
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北小岩 |
「それは参らねばなりませんね」
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二人は町の険しい秘所に向った。
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北小岩 |
「まだでございますか」
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小林 |
「道がだいぶ
陰唇になってきたから、
もうすぐやな」
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わけのわからないことをのたまう。
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北小岩 |
「あっ、見えました」
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小林 |
「ちんちん型をしとるな。
間違いない」
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北小岩 |
「どのような方々の
塚なのですか」
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小林 |
「スケベ塚といってな、
スケベを極めた方々がおるんや」
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北小岩 |
「敬服いたします。
して、その方々は」
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小林 |
「例えば、おなごが誰からも
見られているはずのない原っぱで
全裸になっている。
そのカラダを遠方から眺めて
楽しむために、
極限まで視力を鍛えた男がおった。
測ったことはないが、
視力12.0ぐらいあったのでは
という噂や」
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北小岩 |
「おなご衆も油断できませんね。
常に障子に目ありの状態で
ございますね」
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小林 |
「ずいぶんええ思いをしたらしい。
だがな、意中のおなごが
数キロ先で男と
乳くりあってるところを
見てしまったんや」
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北小岩 |
「それは辛すぎます!」
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小林 |
「ショックで
視力がどんどん落ち、
しまいに近視に
なってしまったらしい」
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北小岩 |
「そうでございますか・・・」
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小林 |
「鼻を鍛えた方もおった。
おなごが遠くでした
小水の匂いを感じ取り、
日によって
濃かったり薄かったりの
『町のおなご小水記録』を
密かにつけとったんやな」
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北小岩 |
「なるほど」
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小林 |
「氏にも意中のおなごがおってな。
彼女の小水が
濃い日が続いとったので、
心配になって
近頃小水が
濃いですよと忠告したら
思いっきり鼻を殴られ、
それから鼻が
きかなくなってしまった
という話や」
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北小岩 |
「・・・」
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スケベ塚に眠る方々は、どこか悲しい。
彼らは男が持つそこはかとない
もの悲しさを体現しているのかもしれない。 |