ミ〜ン ミン ミン
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北小岩 |
「蝉の季節でございますね」
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ミ〜ン ミン ミン
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北小岩 |
「わたくしも、
幼き頃は虫取り網を片手に、
野山を駆けまわったもので
ございます」
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ジ〜 ジ〜
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北小岩 |
「アブラゼミも
負けじと奏でております。
ジ〜ジ〜と言っておりますが。
まさか自慰をしているのでは
ございませんね」
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小林 |
「何真昼間から、
でっかい声で
自慰なんて言っとるんや」
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北小岩 |
「あっ、先生。
わたくし、アブラゼミが
自慰をしているのかと」
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小林 |
「くそ暑いのにお前、
くだらなさだけは
師を追い越したかもしれんな」
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北小岩 |
「それより先生。
わたくし蝉の声を聴いておりますと、
童心にかえるのでございます」
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小林 |
「ほほう」
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北小岩 |
「久しぶりに蝉取りに
興じたくなってまいりました」
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弟子は落ちていた棒に、
落ちていたビニール袋を括り付け、
虫取り網を作った。
先生も弟子も所持金が2円なので、
網を買うことはできない。
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北小岩 |
「実はわたくし、
昔は蝉取り王と
呼ばれておりました」
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小林 |
「その腕前、
見せてもらおうやないか」
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北小岩くんは木に近づいた。
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北小岩 |
「蝉と目を合わせるのが
コツでございます」
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これ以上大きくならないほど目を見開き、
蝉の下に移動した刹那。
バッ しゃ〜〜〜
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北小岩 |
「うわ!
蝉のおしっこが
もろに目に
入ってしまいました!」
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小林 |
「天然の目薬をさしたとでも
思うこっちゃな」
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北小岩 |
「ふう・・・。
ここに蝉の抜け殻がございます。
わたくし、これを記念に
持ち帰りたいと思います」
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小林 |
「抜け殻と言えば
気になる噂を聞いた。
行ってみるか」
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北小岩 |
「はい」
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北小岩くんは先生の後を、
目をこすりながらとぼとぼ歩く。
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小林 |
「ここや。
おるか」
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「おりもの。
ではなく、おります」
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北小岩 |
「先生のお話によりますと、
あなた様が抜け殻と
関係があるということですが」
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「そのことですね。
中へお入りください」
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小林 |
「むっ!」
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部屋にはいろいろな生物の抜け殻が
陳列されていた。
「長い間誰にも話せず、
自分の心の中に
しまっておきました」
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小林 |
「ようわからんが、
話してみい」
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「僕が小学校を卒業した後なんです。
中学生になると、
顕著におちんちんが屹立します」
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小林 |
「そやな」
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「問題は朝なのです。
その部分が天を向いています」
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北小岩 |
「はい」
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「そこで異変が起きまして」
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北小岩 |
「と申しますと」
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「ある日上を向いたイチモツに、
蝉の抜け殻がついていたのです」
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北小岩 |
「?」
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「翌日には蟹の抜け殻、
その翌日には蛇の抜け殻、
その後もムカデ、エビ、トカゲ、
ダンゴムシなど毎日違った生き物の
抜け殻がついておりました」
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小林 |
「そいつらはみんな、
お前のちんちんで脱皮したと
言うことなんやな」
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「そうなんです。
恐ろしくもあり、情けなくもあり、
誰にも相談することができませんでした」
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小林 |
「お前のちんちんは、
生き物が脱皮したくなる何かを
持っているというこっちゃな」
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北小岩 |
「神秘的でございます!」
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話だけを聞くと、その男のちんちんに
不思議なエネルギーがあるように思える。
しかし、よく見ると、
その男のちんちん自体が
抜け殻のようであった。
要するに、類は友を呼んだだけなのでは。 |
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