KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の六百八拾参・・・払う

小林 「聞いたか」
北小岩 「聞きました」
小林 「俺たちの町から
 69キロ離れた街道にできた
 自動販売機のことを」
北小岩 「そうでございますね」
小林 「販売機で買った男たちは、
 はっきりせんな」
北小岩 「口を濁しておりますね」

とぼとぼ

向こうから、買った男の一人が、
なさけなく歩いてきた。

小林 「ヤツもそうやな」
北小岩 「間違いございません」
小林 「問い詰めてみるか」
北小岩 「はい。
 こんにちは。
 あなた様は
 69キロ離れた街道の
 自動販売機で何か買いましたね」
なさけ
ない男
「ああ」
北小岩 「何を買ったのですか」
なさけ
ない男
「買ったけど、
 何も買ってないんだよ」
北小岩 「どういうことでございますか」
なさけ
ない男
「俺が悪かったんだよ」
北小岩 「何が悪かったのでございますか」
なさけ
ない男
「もういいよ。
 何も聞かないでくれよ」

そう言うと、
股間を握りしめながら走り去ってしまった。

小林 「見たか」
北小岩 「はい。
 股間を握りしめていたところが
 気になります」
小林 「行ってみるか」

師弟は69キロ先まで全力で走った。
途中、道端に落ちていたパンティを拾うのは
忘れなかった。

北小岩 「あの販売機でございますね。
 男性用の大人のおもちゃが
 売られているようです。
 『マン・ホール・ヘブン』と
 書かれております。
 おやっ、あたりをうかがいながら、
 スケベそうな方が
 やってまいりました。」
スケベ
そうな
「この一番高いのを買うか。
 見てるだけで興奮してきたな」

自販機はまずボタンを押して、
それからお金を入れるようになっている。
スケベ
そうな
「これで自分の手を
 使わなくていいな。
 いひひひひひひ」

いやらしい声を出して、ボタンを押す。

ぎゅい〜ん

下の扉が開き、
女性の手を模した物体が伸びてきて
股間をつかんだ。

スケベ
そうな
「いひひひ。
 こんなサービスまであるのか」

ガツッ ギュンギュンギュンギュン

スケベ
そうな
「痛え!
 思いっきり握ってきやがった!」


パッパッパッ

ディスプレイに
タクシーメーターのようなものが現れ、
数字がどんどん上がっていく。

「お金を入れないと、料金が上がり続けるのよ」

女性の電子音が意地悪そうな声を出す。

スケベ
そうな
「つっ、つぶれる!
 なんで3万円も
 払わなくちゃならないんだ!」

ギュンギュンギュンギュン

スケベ
そうな
「もっ、もう耐えられねえ!」


男は表示されていた6万9千円を投入した。

しゅ〜〜〜

股間を握る力が緩められ、
手は販売機の中に戻っていった。

あまりのなさけなさに
男はどうすることもできずに、
股間をおさえながらとぼとぼ帰っていった。

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2017-11-05-SUN

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