KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の七百拾四・・・振込

がたっ

「はいよ」

ばさっ

小林 「なんや?」
北小岩 「回覧板でございます」
小林 「誰からや?」
北小岩 「町内会ではないでしょうか。
 んっ?」
小林 「どした?」
北小岩 「町内会ではないようです」
小林 「そうか」
北小岩 「大金持ちで有名な
 『金多馬田(きんたまだ)』様
 からの回覧板のようです」
小林 「どういうこっちゃ」
北小岩 「『銀行口座を
 お持ちの方は、
 楽しみにお待ちください』」
小林 「ほほう」
北小岩 「『口座をお持ちでない方は、
  すぐにお作り下さい』
 とのことです」
小林 「なるほどな」
北小岩 「どういうことでしょう」
小林 「金多馬田は金は持っとるが、
 下の金がもうダメらしいんや。
 ヤツはこれといった趣味もなく、
 金が貯まる一方やから、
 町のヤツらに還元しようと
 思ったんやろな」
北小岩 「なるほど。
 しかし、わたくしたち
 通帳を持っておりません」
小林 「お前所持金はいくらや」
北小岩 「2円でございます」
小林 「俺も2円持っとる。
 二人で4円もあれば十分やろ」

師弟は2円ずつ握りしめ銀行へ。

小林 「通帳は
 いくらあれば作れるんや」
銀行の
女性
「1円からでございます」
小林 「俺たちは各自10億ずつ
 持っとるが、
 今日のところは1円ずつで作ったるわ」

そのようにして手帳を手に入れた。
そして、大金持ちから入金される日がやってきた。

小林 「これでもう俺たちも
 汗水たらして
 働かなくてすむな」

師弟がまともに働いているところなど、
見たことないのであるが。

北小岩 「どれぐらい巨額のお金が
 入っているか楽しみですね」

二人は銀行員にやり方を教えてもらい記帳した。

小林 「数千万入っているかもな」
北小岩 「そうでございますね!」
小林 「むっ!
 お前はどや!」
北小岩 「はい。むむっ!
 お金の替わりに『屁』が
 振り込まれております!」

通帳にでかでかと
『屁』と印字されているのだ。

小林 「俺もや!」
北小岩 「まさか」

二人は『屁』の文字に鼻を近づけてみた。

プ〜

小林 「臭せえ!」
北小岩 「臭いでございます!」

大金持ちは有り余るお金を
町の人々に分配するのではなく、
このしょうもないシステムを構築するために
注ぎ込んだらしい。
先生の町は、大金持ちまでくだらない。

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2018-06-10-SUN

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