ぼ〜っ
庭のどくだみを眺めながら、
ぼ〜っとしている男がいる。
ぼ〜っ ぼ〜っ
頭頂から汽笛が響きそうである。
五月病かとも思われたが、
もともと働いているのかも
よくわからないこの男に、
五月病は関係ないであろう。
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小林 |
「お前さっきから、
沼に浮かんだ
便器のようやな」
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北小岩 |
「あっ、先生。
便器は浮かんでおりますが、
わたくしは
浮かばれないので
ございます」
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どうでもいい例えを、
さらに展開する必要などない。
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小林 |
「何がお前のこころを
便器にしとるのか、
言うてみい」
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北小岩 |
「照れくさい話なのですが」
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小林 |
「おならくさくなければ
よいわ」
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北小岩 |
「わたくし、何年かぶりで
恋をしたのでございます」
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小林 |
「ほほう」
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北小岩 |
「しかし、その女性とは
一言もしゃべったことも
ございません。
今後の展開が
知りたいのです」
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小林 |
「最近、町はずれに
よく当たる占い師が
出没するらしいんや。
行ってみるか」
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運命を白日の下に
さらしてもらうことにした。
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北小岩 |
「占い師様、
わたくし片想いを
しております。
相思相愛になれるのか
占っていただきたいのですが、
所持金が2円しか
ございません」
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女性
占い師 |
「今回は特別に
2円で占って差し上げます。
では、
陰毛を出してください」
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北小岩 |
「えっ?」
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どっどっ
どこからか屈強な女性たちが現れ、
弟子は羽交い締めにされた。
ぶちっ!
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女性
占い師 |
「好き!」
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北小岩 |
「痛いでございます!」
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ぶちっ!
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女性
占い師 |
「嫌い!」
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北小岩 |
「股間が
熱くなって
まいりました〜!」
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花占いのように、
陰毛を一本一本抜かれていった。
それから何時間たったであろうか。
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女性
占い師 |
「最後の一本ね」
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ぐったりしている北小岩くんの目が、
一瞬光った。
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女性
占い師 |
「嫌い!」
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弟子はうなだれ、
ついでにちんちんもうなだれていた。 |