し〜ん
ぱら
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北小岩 |
「午後の図書館。
静けさの中でページを繰る。
至福の時でございます。
そうでございます。
わたくし、案外
この町の歴史を
知りませんでした」
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すたすた
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北小岩 |
「町の歴史書はと。
ございました」
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ぱらぱら
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北小岩 |
「え〜と」
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『数十年前、この町で世界史上例を見ない
食品偽装事件が起きてしまった』
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北小岩 |
「そのように重大な
出来事があったとは!
内容が書かれておりませんが、
先生ならご存知に
違いございません。
すぐに戻らねば」
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たったったっ
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北小岩 |
「先生!」
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小林 |
「なんや!
糞でも半漏れしとるんか」
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北小岩 |
「違います。
先生はこの町で起きた
食品偽装事件について
ご存知でございますか」
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小林 |
「ああ。
参加したな」
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北小岩 |
「先生が
犯人だったのですか」
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小林 |
「違うわ。
捜査に参加したんや」
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北小岩 |
「どういうことでしょうか」
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小林 |
「町に本物の温泉で作った
『温泉卵』を
謳い文句にしとる店が
あってな。
警察が偽装やないかと
疑った」
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北小岩 |
「食品偽装は
いろいろございますね。
期限切れのものを
原材料に使ったり、
産地を偽装したり。
温泉卵の場合、
際には温泉で
作っていなかった
ということですか」
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小林 |
「そういうこっちゃ。
店の鍋で作ったものに、
ある細工をして
硫黄の匂いを
しみ込ませ、
本物として
売ってたんやな」
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北小岩 |
「とてもいやな予感が
いたしますが、
お聞かせください」
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小林 |
「警察と俺が
店の裏にある工場に
踏み込んだ時、
店員らはパンツを脱いで
卵をケツにあて、
屁をかけていたんや」
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北小岩 |
「げげ〜!
お客様は
硫黄の香りがすると
ありがたがって
食べていたでしょうに。
実はそれは
屁の臭いだったのですね」
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小林 |
「そうなんや」
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北小岩 |
「先生はなぜ捜査に
立ち会われたのですか」
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小林 |
「俺は町で一番、
鼻が利いてな。
警察犬のかわりに
抜擢されたんや」
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北小岩 |
「どういうことでしょうか」
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小林 |
「屁をこいてるヤツの
ケツの臭いを嗅いで、
それから卵の臭いを嗅いで、
それが同一のものと
判定したんやな」
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北小岩 |
「・・・」
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先生の町は、
偽装事件ですらくだらなさが漂う。 |