北小岩 |
「わたくし、
毎年梅見の会に参加させて
いただいております。
白梅に紅梅。
まるで美男と美女。
絶妙な組み合わせです」
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ざっざっ
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北小岩 |
「あちらから、町のことに
かなりの決定権を
持っている女性たちが
やってまいりました」
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弟子はまるで
大名行列に遭遇した平民のように、
道をあけて頭を垂れた。
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かなりの
決定権を
持ってい
る女性A |
「もっと子どもと女性に
やさしい町にしないと
ダメよね」
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かなりの
決定権を
持ってい
る女性B |
「そうよ。
町の男たち、
やさしさが足りないのよ」
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かなりの
決定権を
持ってい
る女性A |
「この間、子どもと
小柄な女性が
電車で倒れそうになってたわ」
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かなりの
決定権を
持ってい
る女性B |
「そんな時でさえ、
クズ男たちは
手を貸さないのね」
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かなりの
決定権を
持ってい
る女性A |
「どうしたらいいと思う?」
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かなりの
決定権を
持ってい
る女性B |
「こういうのはどう?」
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かなりの
決定権を
持ってい
る女性A |
「いいじゃない!
今度の立ち話で
決定しましょ」
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かなりの
決定権を
持ってい
る女性B |
「そうしましょ」
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先生の町では、かなり重要なことが
女性たちの立ち話で決定するらしい。
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小林 |
「聞いたか」
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北小岩 |
「あっ、先生。
何が決まるので
ございましょうか」
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小林 |
「想像もつかんが
不穏やな」
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後日、駅長から
電車に試乗してほしいと頼まれた二人は。
がたんごとん
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小林 |
「新しい車両でもないのに
どういうこっちゃ」
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北小岩 |
「わかりません。
ラッシュで混んでおりますね」
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車掌 |
「次のカーブは
大変揺れますので、
吊り革や吊り玉に
おつかまりください」
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北小岩 |
「吊り玉とは何でしょうか」
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むんず むんず
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北小岩 |
「どなたかが、
わたくしの玉及び
玉袋をつかみました」
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小林 |
「俺のもや」
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ぎゅ〜ん がたがたがた
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北小岩 |
「うお〜!
玉袋が破れる寸前まで
引っ張られております!」
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小林 |
「ちぎれるで〜〜〜!」
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北小岩 |
「わたくし、
激痛のあまり・・・」
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弟子は気を失ってしまった。
北小岩くんの玉袋をつかんで
引っ張った女性は、小柄ながら
『金玉引っ張り合気道』の有段者であった。
先生のそこは同じ道場に通う
将来有望な女の子にむんずとつかまれていた。
かなりの決定権を持っている
女性たちの立ち話で、
吊り革に手が届かない小柄な女性と子どもは、
揺れに備えて男の玉袋を吊り革がわりに
握ってよいこととなったのだ。
吊り革というより、
ぶらぶら吊り下がった吊り玉である。
金玉袋は鍛えようがないため、
男たちにとって町の電車は
デンジャラスゾーンになってしまった。
ところで金玉引っ張り合気道って、
どんな武道なのでしょうか。 |