KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の八百伍・・・ふにゃ

小林 「冷える朝の散歩は
 早足になるな」
北小岩 「そうでございますね」

ざっざっざっざっざっざっ

小林 「このスピードだと
 すぐには止まれんな」
北小岩 「あっ、
 巨大な犬の糞が
 道を塞いでおります!」

ぶにょ ぶにょ

小林 「くそ!
 踏み抜いてしまったわ」
北小岩 「わたくしもです」
小林 「しゃあない。
 藁草鞋を洗いに行くか」

踏み抜いてしまったブツを流すため、
町役場の水道に向かうと。

北小岩 「屋上におっかなそうな
 女性役人の方々が
 いらっしゃいます」

ばっ

北小岩 「懸垂幕が
 吊り下げられました」
小林 「『ふにゃちん』と
 書かれとる」
北小岩 「どういうことでしょうか」
小林 「わからん」

北小岩 「あそこに
 ご夫婦が
 いらっしゃいますね」
「この標識、
 ふにゃちんになってるわよ」

見ると標識に車がぶつかったらしく、
ぐんにゃりとしている。

「そんな言い方やめろよ」

「あんた知らないの」
「何がだよ」
「今日からこの町では、
 ぐんにゃりしたもの、
 やわらかいもの、
 なさけないものを
 すべて『ふにゃちん』と
 呼ぶことに決まったのよ」
「そんなことされたら、
 男の威厳がたもてないだろ」

二人の会話に一人の女が割って入った。

一人
の女
「何が威厳よ。
 ふにゃちんのくせに」
「えっ」
「妻の私が
 あんたのふにゃちんを
 知っているのは
 当然だけど、
 なんでこの人も
 知っているのよ」
一人
の女
「ふふふふ」

一人の女は、
不敵な笑みを浮かべて去っていった。

「あんた、
 浮気しようとして
 ふにゃちんで
 失敗したんでしょ」
「そっ、そんなことは」

ぼこっ

妻の鋭い蹴りが、ふにゃちんをとらえた。

ぼこっ ぼこっ ぼこっ

「うっ、
 ぐふっ、ぐふっ」

永久に続きそうな勢いだ。
今私たちにできるのは、
この蹴りが劇薬となり、
奇跡的にふにゃちんが解消されるのを
願うことだけである。

小林秀雄さんへの激励や感想などは、
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2020-03-08-SUN

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