KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の八百拾壱・・・蔓

パラパラパラ

小林 「桜は散ってしまったな」
北小岩 「そうでございますね」
小林 「お前は
 散りゆくものに対して
 どんな感慨を持つ」
北小岩 「先生とわたくしは、
 花が咲かずに
 すでに散っているのではないかと」
小林 「なるほどな」
北小岩 「若いころは
 ひと花咲かせたいと
 考えたものでした。
 しかし、近頃では
 散るだけでも
 大したことではないかと
 思っております」
小林 「お前も一皮むけたな」
北小岩 「二皮めでございます。
 中学生の時、
 おちんちんの皮がむけました」


哲学的な話かと思いきや、
どうでもよい話だった。

じゃ〜

北小岩 「むっ!
 わんこが先生に
 放尿しております」

ぷ〜ん

北小岩 「わんこが先生に
 脱糞しております」
小林 「この野郎!」
北小岩 「蹴ってはなりませぬ!
 生類憐みの令の時代でしたら、
 打首になるやもしれませぬ」
小林 「ふ〜」

先生は深く呼吸し、己を落ち着かせた。
犬は勝ち誇った顔でその場を去った。

北小岩 「御犬様の時代、
 この町でも何か
 令が出されたのでしょうか」
小林 「以前町の歴史家に
 聞いたんやが、
 あったらしいな」
北小岩 「どのようなもので
 ございますか」
小林 「蔓類(つるるい)憐みの令」
北小岩 「それは何でしょうか」
小林 「江戸時代、
 ここの首長が
 険しい崖から
 転げ落ちそうになった時、
 蔓が足に絡まったおかげで
 命拾いした。
 それで蔓を切ることも
 ほどくこともならんという
 おふれをだした」
北小岩 「御犬様に比べて、
 インパクトが弱い気がいたします」
小林 「お前は蔓がのさばった時の
 怖さを知らんな」
北小岩 「えっ?」
小林 「伸びが異常に早くなる。
 そして、悪さをするようになる」
北小岩 「そうなのですか」
小林 「男は寝ている間に、
 ちんちんを
 ぐるぐる巻きにされた」
北小岩 「それは大変でございます。
 切ることもほどくことも
 できなければ、動けないです」
小林 「移動する時には
 根を切らないように
 深く掘って、
 それと一緒に動かねばならない」
北小岩 「不便すぎます!」

小林 「根が地中深く
 張られているため、
 蔓の根を平蓮台に乗せ
 四人の男がそれを担ぎ、
 ちんちんに巻きつかれた野郎は
 とぼとぼ後ろをついていった」
北小岩 「なさけない大井の渡し
  のようですね」

蔓類憐みの令・・・。変な村。

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2020-04-19-SUN

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