パラパラパラ
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小林 |
「桜は散ってしまったな」
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北小岩 |
「そうでございますね」
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小林 |
「お前は
散りゆくものに対して
どんな感慨を持つ」
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北小岩 |
「先生とわたくしは、
花が咲かずに
すでに散っているのではないかと」
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小林 |
「なるほどな」
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北小岩 |
「若いころは
ひと花咲かせたいと
考えたものでした。
しかし、近頃では
散るだけでも
大したことではないかと
思っております」
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小林 |
「お前も一皮むけたな」
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北小岩 |
「二皮めでございます。
中学生の時、
おちんちんの皮がむけました」
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哲学的な話かと思いきや、
どうでもよい話だった。
じゃ〜
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北小岩 |
「むっ!
わんこが先生に
放尿しております」
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ぷ〜ん
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北小岩 |
「わんこが先生に
脱糞しております」
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小林 |
「この野郎!」
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北小岩 |
「蹴ってはなりませぬ!
生類憐みの令の時代でしたら、
打首になるやもしれませぬ」
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小林 |
「ふ〜」 |
先生は深く呼吸し、己を落ち着かせた。
犬は勝ち誇った顔でその場を去った。
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北小岩 |
「御犬様の時代、
この町でも何か
令が出されたのでしょうか」
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小林 |
「以前町の歴史家に
聞いたんやが、
あったらしいな」
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北小岩 |
「どのようなもので
ございますか」
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小林 |
「蔓類(つるるい)憐みの令」
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北小岩 |
「それは何でしょうか」
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小林 |
「江戸時代、
ここの首長が
険しい崖から
転げ落ちそうになった時、
蔓が足に絡まったおかげで
命拾いした。
それで蔓を切ることも
ほどくこともならんという
おふれをだした」
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北小岩 |
「御犬様に比べて、
インパクトが弱い気がいたします」
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小林 |
「お前は蔓がのさばった時の
怖さを知らんな」
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北小岩 |
「えっ?」
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小林 |
「伸びが異常に早くなる。
そして、悪さをするようになる」
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北小岩 |
「そうなのですか」
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小林 |
「男は寝ている間に、
ちんちんを
ぐるぐる巻きにされた」
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北小岩 |
「それは大変でございます。
切ることもほどくことも
できなければ、動けないです」
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小林 |
「移動する時には
根を切らないように
深く掘って、
それと一緒に動かねばならない」
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北小岩 |
「不便すぎます!」
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小林 |
「根が地中深く
張られているため、
蔓の根を平蓮台に乗せ
四人の男がそれを担ぎ、
ちんちんに巻きつかれた野郎は
とぼとぼ後ろをついていった」
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北小岩 |
「なさけない大井の渡し
のようですね」
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蔓類憐みの令・・・。変な村。
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