ざっざっ
向こうから、
無駄に胸を張った男たちが歩いてくる。
ざっざっざっ
二人はドラマの刑事のように
カッコよくはない。
いや、はっきりとカッコ悪い。
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小林 |
「どや?」
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北小岩 |
「何がでございますか」
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小林 |
「先週、
ちんちんがしもやけになったと
言っとったろ」
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北小岩 |
「そのことでございますね。
完治いたしました」
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小林 |
「ほほう。
ええ方法見つけたんか」
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北小岩 |
「先生と懇意にされている
通称・蟻の門渡り社長から
いただいた薬が効きました」
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小林 |
「どんな薬や」
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北小岩 |
「マンズリーノと申します。
塗ったとたんに
しもやけが上気いたしまして、
そのままかゆみが消えました」
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小林 |
「薬品名もええし、
よかったな」
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北小岩 |
「ありがとうございます」
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薬品名はまったくよくないであろう。
「うう、しくしく」
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小林 |
「路地の割れ目から、
泣き声が聞こえんか」
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北小岩 |
「あっ、
赤鬼さんが
うずくまっております」
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小林 |
「節分は終わったのに
どうしたんや」
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赤鬼 |
「ぼそぼそ」
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小林 |
「聞こえんな。
鬼やったら、
堂々はっきり言うてみい!」
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赤鬼 |
「今年の節分は、
124年ぶりに2月2日でした」
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小林 |
「そやな」
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赤鬼 |
「僕は今年も
2月3日が節分だと勘違いして、
夜に土管の中で
プライベートの時間を
過ごしていたんです。
そこに大勢の人がやってきて、
豆をぶつけられて」
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北小岩 |
「それは気の毒でございます。
ところで何をしていたのですか」
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赤鬼 |
「ぼそぼそ」
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小林 |
「はっきり言わんかい!」
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赤鬼 |
「・・・。
鬼用のエロ本を見て、
マスをかいていたんです」
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小林&
北小岩 |
「なんと!」
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赤鬼 |
「顔はエロ本で
豆をよけたのですが、
おちんちんを見られてしまい」
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北小岩 |
「でも、あなた様は
巨根で有名ではないですか」
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赤鬼 |
「例年は箔をつけるために、
シマシマパンツの中に
張形タイプの棍棒を
入れているんです」
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北小岩 |
「そうなのでございますか」
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赤鬼 |
「現物は短小なんです。
僕に豆を
ぶつけに来た人たちは、
口々に
『ペットボトルのふた
二個分しかねえじゃねえか!』
といって冷笑し、
ちんちんめがけて
大量の豆をぶつけました。
今もチン心(心身)の
傷が癒えずに、
涙が出てきてしまうのです」
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北小岩 |
「おちんちんの大きさは
人格には、
いえ鬼格には
なんの関係もないと思います」
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そういいながらも北小岩くんの脳裏には、
先生のブツは
ペットボトルのふた一個分しかないことが
よぎっていたのである。 |