「いち、に、いち、に」
町のいたるところで、カラダを鍛える声がする。
「さん、し、さん、し」
「ちん、げ、ちん、げ」
「まん、げ、まん、げ」
不穏当なかけ声が混ざった。
声の主に目をやると。
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北小岩 |
「今日は
年に一度の日でございますね」
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小林 |
「そやな」
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北小岩 |
「毎年長老が
テーマをお決めになるのですね」
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小林 |
「今年は『背中の日』や」
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やはりチンカス師弟だった。
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北小岩 |
「みなさま、
背筋と太ももを
鍛えておりますね」
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小林 |
「長時間重いものを
背負うヤツもおるからな」
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先生の町では年に一度、
お自慰さんと呼ばれる長老が
気まぐれで何の日かを決める。
背中の日・・・。
今日一日自分にとって
一番大切なものを背負って過ごすのである。
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北小岩 |
「向こうから
町一番のモテ男さんが
いらっしゃいます」
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小林 |
「背中に
十人美女を括りつけとる」
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北小岩 |
「♪親亀の背中に子亀をのせて〜
のようでございます」
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小林 |
「ヤツはちゃらいと思っとったが、
尋常ではなく鍛えとるな」
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北小岩 |
「わたくしは
先生からいただいた
大量のエロ本を
本棚に入れて背負います。
よっ!」
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ばた〜ん
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北小岩 |
「おっ、
重過ぎるでございます!」
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弟子はひっくり返った亀のようになり、
首を伸ばしたり縮めたりの抵抗を試みたが
起き上がれず、その姿は亀頭のようだった。
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小林 |
「俺のお宝はこれや!」
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そこには懇意にしている社長からもらった
大理石のスケベ椅子があった。
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小林 |
「気合を入れていくで。
よっ!」
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グキッ!
ばたっ。
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小林 |
「うっ!
腰が!!」
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先生は重度のぎっくり腰により、
背中にスケベ椅子をつけたまま
起き上がれなくなった。
背中の日・・・。
おかあさんや恋人への
愛情を示すのかと思いきや、
この町の男たちの下等さを
際立たせただけであった。 |