KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の八百九拾四・・・高の前に

北小岩 「股を広げたような
 よい天気でございますね」
小林 「そやな」
北小岩 「ところが先生は
 浮かない顔をされているようです。
 何かございましたか」
小林 「びみょ〜な予感がするんや」
北小岩 「どういうことでしょうか」
小林 「町に普段とは違う空気が漂っとる」

どよ〜ん

北小岩 「向こうから
 中学生の高くんが
 歩いてまいります。
 顔に影があります」
小林 「おう、高坊。
 どうしたんや」
「あっ、先生と北小岩さん。
 長老からお達しがあったのを
 知ってますか」
小林 「知らんな」
「この町ではこれから
 『高』という字の前には
 必ず『雁(カリ)』という字を
 つけなければならなくなったのです。
 僕の本名は
 『高小擦(たかこすり)』
 じゃないですか」
北小岩 「ということは、
 『雁高小擦(かりだかこすり)』に
 なってしまったのでは」
「そうなんです。
 僕は実は雁低だし、
 みんなから思いっきりバカにされて」
小林 「長老も
 しょ〜もない御触れを出したな」

どよ〜ん

北小岩 「あちらから
 小学校の先生が歩いてまいります」
小林 「顔色がよくないな」
北小岩 「どうされましたか」
小学校
の先生
「長老のせいで・・・」
北小岩 「『高』に関することですね」
小学校
の先生
「そうなんですよ。
 三角形の面積の求め方を
 教えていて」
北小岩 「え〜と。
 底辺×高さ÷2。
 あっ!
 『底辺×雁高さ÷2』に
 なってしまいます」
小学生
の先生
「女子生徒から
 雁高が何かわからないと
 質問がありまして、
 仕方なくこっそり見せていたら、
 怖い女校長に
 その場面を見られてしまい
 謹慎処分になっています」


北小岩 「それは災難でございます」
小学校
の先生
「順風満帆だった僕の人生も
 『底辺』になってしまい、
 念願の『高』学年を
 受け持っておりましたが外され、
 月給も『÷2』で
 半分になってしまっています」
小林 「文字通りの底辺×高さ÷2やな」

「ぐわきょわ〜っ!」

小林 「陸上競技場から
 奇天烈な声が聞こえるな」
北小岩 「行ってみましょう」

ダダダダッ

北小岩 「あっ!
 棒高跳びの選手が
 おちんちんを出しています!」
小林 「お前、何やっとるんや!」
ちんちん
を出した
棒高跳び
の選手
「長老が『高』の前に『雁』を
 つけなきゃいけなくしたから、
 棒雁高跳びになっちゃったんだよ。
 空中で雁も
 ラインを越えなきゃならなくて。
 棒の操作だけでも難しいのに、
 自分の棒も
 操作しなくちゃならなくなって。
 雁を思いっきりぶつけたよ」
小林&
北小岩
「・・・」


先生の町では冬の気圧配置は
西雁高東低(せいかりだかとうてい)に
なってしまった。

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2021-11-21-SUN

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