北小岩 |
「股を広げたような
よい天気でございますね」
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小林 |
「そやな」
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北小岩 |
「ところが先生は
浮かない顔をされているようです。
何かございましたか」
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小林 |
「びみょ〜な予感がするんや」
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北小岩 |
「どういうことでしょうか」
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小林 |
「町に普段とは違う空気が漂っとる」
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どよ〜ん
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北小岩 |
「向こうから
中学生の高くんが
歩いてまいります。
顔に影があります」
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小林 |
「おう、高坊。
どうしたんや」
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高 |
「あっ、先生と北小岩さん。
長老からお達しがあったのを
知ってますか」
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小林 |
「知らんな」
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高 |
「この町ではこれから
『高』という字の前には
必ず『雁(カリ)』という字を
つけなければならなくなったのです。
僕の本名は
『高小擦(たかこすり)』
じゃないですか」
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北小岩 |
「ということは、
『雁高小擦(かりだかこすり)』に
なってしまったのでは」
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高 |
「そうなんです。
僕は実は雁低だし、
みんなから思いっきりバカにされて」
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小林 |
「長老も
しょ〜もない御触れを出したな」
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どよ〜ん
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北小岩 |
「あちらから
小学校の先生が歩いてまいります」
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小林 |
「顔色がよくないな」
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北小岩 |
「どうされましたか」
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小学校
の先生 |
「長老のせいで・・・」
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北小岩 |
「『高』に関することですね」
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小学校
の先生 |
「そうなんですよ。
三角形の面積の求め方を
教えていて」
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北小岩 |
「え〜と。
底辺×高さ÷2。
あっ!
『底辺×雁高さ÷2』に
なってしまいます」
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小学生
の先生 |
「女子生徒から
雁高が何かわからないと
質問がありまして、
仕方なくこっそり見せていたら、
怖い女校長に
その場面を見られてしまい
謹慎処分になっています」
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北小岩 |
「それは災難でございます」
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小学校
の先生 |
「順風満帆だった僕の人生も
『底辺』になってしまい、
念願の『高』学年を
受け持っておりましたが外され、
月給も『÷2』で
半分になってしまっています」
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小林 |
「文字通りの底辺×高さ÷2やな」
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「ぐわきょわ〜っ!」
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小林 |
「陸上競技場から
奇天烈な声が聞こえるな」
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北小岩 |
「行ってみましょう」
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ダダダダッ
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北小岩 |
「あっ!
棒高跳びの選手が
おちんちんを出しています!」
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小林 |
「お前、何やっとるんや!」
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ちんちん
を出した
棒高跳び
の選手 |
「長老が『高』の前に『雁』を
つけなきゃいけなくしたから、
棒雁高跳びになっちゃったんだよ。
空中で雁も
ラインを越えなきゃならなくて。
棒の操作だけでも難しいのに、
自分の棒も
操作しなくちゃならなくなって。
雁を思いっきりぶつけたよ」
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小林&
北小岩 |
「・・・」
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先生の町では冬の気圧配置は
西雁高東低(せいかりだかとうてい)に
なってしまった。 |