とんとん
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北小岩 |
「入ってますか?」
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「何だよ!」
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北小岩 |
「違いました。
申し訳ございません」
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とんとん
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北小岩 |
「入ってますか?」
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「おい! 落ち着かねえだろ」
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北小岩 |
「ここも違いました。
申し訳ございません」
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じゅわっ
弟子の目に涙が光る。
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小林 |
「お前、
便所で人に迷惑をかけたうえ、
なぜ泣いとるんや。
変態が極まったか」
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北小岩 |
「あっ、先生。
そうではございません。
あの方が・・・」
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小林 |
「便さんのことやな」
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北小岩 |
「そうでございます」
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便さんとはいったいどんな人物であろう。
その一コマを見てみよう。
ニコニコニコ
便さんは一度も怒ったことがない。
常に凪のような男だ。
そして。
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便さん |
「北小岩さん、
ご一緒お願いできますか?」
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北小岩 |
「ぜひよろしくお願いいたします!」
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ぱたんぱたん
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便さん |
「ではまいりましょうか!」
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北小岩 |
「はい!」
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ぶり
ぶり
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便さん |
「幸せですか〜」
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北小岩 |
「幸せですよ〜」
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便さんのチャームポイントは、
連れしょんならぬ連れ便なのである。
便さんの隣の小部屋で同時に出すと、
不思議なことに誰もが至福を味わえるのだ。
町の男たちはみな便さんとのひと時を
楽しみにしているため、
数年に一度しか順番が回ってこない。
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小林 |
「俺も便さんと出した便が、
マイフェイバリット便(べん)やな」
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北小岩 |
「わたくしもでございます。
しかし、このところ
便さんを見かけなくなっております。
どうしたのでしょうか。
とても心配で町のトイレを
まわっていたのでございます」
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小林 |
「残念ながら便さんは
もう町にはおらん」
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北小岩 |
「どういうことでしょうか」
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小林 |
「新たな世界を求めて
森に入った」
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北小岩 |
「えっ?」
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小林 |
「これからは森の動物たち、
鹿や猪や野兎などと
自然の中で
連れ便することにしたんやな」
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北小岩 |
「そうなのでございますか・・・。
穏やかな方でございますから、
森の動物たちと
穏便にやっていかれるのですね」
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森へと旅立った愛すべき男、便さん。
ところであなたのマイフェイバリット便(べん)は
どの便ですか? |