北小岩 |
「ここに梯子をセットしてと。
先生、準備ができました。
こちらへどうぞ」
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小林 |
「よっこらしょうべん」
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北小岩 |
「ほいきただいべん」
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新年早々
わけのわからないことをのたまう師弟である。
何をしているのであろう。
がー どーん!!
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北小岩 |
「始まりました!」
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先生宅にあるブラウン管の白黒テレビは
画面が割れ、中にイモ虫が住んでいる。
もちろん何も映らない。
そこで梯子に上って
隣家の映画をのぞき観るのである。
どかどかどか
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小林 |
「凄まじい迫力やな」
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北小岩 |
「おスぺでございます!
男性たちが
全員昇天いたしました!!」
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小林 |
「その物言いは誤解を招くな。
おスぺではなくちゃんと
スペクタクルといわんかい」
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北小岩 |
「申し訳ございません」
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映画の
NA |
「時は22世紀。
第三次核戦争の勃発により
地球は荒れ地と化し人類は‥‥」
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小林 |
「今のナレーション
気にならんかったか」
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北小岩 |
「そうでござますね」
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小林 |
「未来世紀が核戦争により汚染される。
食物危機を招く。
そこから始まるストーリーが
多すぎる気がせんか」
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北小岩 |
「確かにそのパターンは
何度か拝見しております」
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小林 |
「もっと多様な未来のあり方が
あるんやないか。
ちょうど今、
『未来はどうなるのか会議』が
行われとる」
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北小岩 |
「拝聴いたしましょう」
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師弟が到着すると、
すでに会議場では熱い議論が交わされていた。
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未来
有識者
A |
「未来は核戦争による汚染ではなく、
ケツの穴がなくなることによる
体内汚染が人類の危機を
招くのではないでしょうか」
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未来
有識者
B |
「どういうことでしょう」
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未来
有識者
A |
「人は心のどこかで
ケツの穴があること、
そこから大便が出ることを
恥ずかしいと思っています。
恥ずかしいと感じるモノが
これ以上存続できるでしょうか」
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未来
有識者
B |
「なるほど。
確かに次の世紀には
ケツの穴がなくなり、
人類は排泄物を
永遠に溜め続けることになり、
体内が危機的状況になりますな」
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未来
有識者
C |
「それにともない
屁もケツの穴から
出せなくなります。
排泄物を体内に
蓄積させ続けるわけですから
そこから湧き上がる屁の総量も
数十倍、いや数百倍に
なるでしょう」
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未来
有識者
A |
「一般的に考えれば
屁は口から出るようになると
思われますが、
口からだけではまかないきれず、
目や耳、鼻の穴、
毛穴からも出る可能性が高い」
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未来
有識者
B |
「牛のゲップなどが
世界の温室効果ガスの
4%を占めるとも言われていますが、
人の屁も数百倍になれば
温暖化による地球危機の
有力要素になってしまうことは
間違いありません」
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小林 |
「聞いたか」
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北小岩 |
「はい。
つまり核戦争だけが
未来の危機要因ではない
ということですね。
映画のナレーションも再考ですね」
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小林 |
「『時は22世紀。
ケツの穴を失ったために
屁の総量が数百倍になり、
地球は荒れ地と化し人類は‥‥』」
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北小岩 |
「それがリアルでございますね!」
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リアルなのかどうか。
答えは次世紀まで待たねばならない。 |