KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の九百七・・・わらし

しんしん〜

北小岩 「夜も更けてまいりました。
 厳しい冷えでございます。
 先生も
 お風邪など召されては
 一大事です。
 そろそろ休まれた方が」
小林 「俺は読書してからや。
 お前は先に休んどけ」
北小岩 「かしこまりました。
 おやすみなさい」

読書というと聞こえはいいが、
だらしなくエロ本を読むだけである。
その証拠に先生の股間はすでにテントを張っている。

先生が書棚から
エロ本を手に取ったその時、
夜のしじまとテントを引き裂く声が轟いた。

「臭〜〜〜〜〜〜〜〜え!」

「何この臭い〜〜〜〜〜!」

小林 「町に異変が起きとるな」
北小岩 「駆けつけましょう!」

先生と北小岩くんは町一番の暇人のため、
防犯係に任命されている。

ダダダッ トントン

北小岩 「どうなさいましたか!」
夫A 「寝床に入って布団を掛けたら、
 中からとんでもなく
 臭い屁が漂ってきたんだよ」
妻A 「私の布団の中にも、
 この世の物とは思えないほど
 腐ったおならが入っていたのよ」
夫A 「妻は最初、
 俺が嫌がらせで
 屁を入れ込んだと勘違いして
 怒っていたんだけど、
 俺は屁の神様に誓っても
 そんなことしてないんだよ」

北小岩 「そうでございますか・・・」
小林 「他の家に行ってみるか」

トントン トントン

北小岩 「先ほど
 叫び声が聞こえましたが、
 どうなさいましたか!」
妻B 「私は深呼吸すると
 すぐ眠れるのね。
 だけどさっき寝ようとして
 大きく息を吸った時、
 布団の中から
 硫黄が爆発したような
 おならの臭いがして、
 それを肺の奥まで
 吸い込んでしまったのよ」
夫B 「僕の布団にも
 蔵出しのような屁が
 注入されていた。
 だけどどう考えても
 誰かが侵入して
 ないんだよ」
北小岩 「それは不気味な上に
 臭いでございますね」

小林 「怪奇現象の専門家に
 聞いてみるか」

師弟が専門家の
門渡蟻野(とわたりありの)氏を訪れると、
氏は異変を察知しており
門の外で厳しい顔をしていた。

小林 「町のやつらが
 布団の中に屁をこかれ、
 しかしこいた犯人もいなければ
 その痕跡もない。
 どういうこっちゃ」
門渡
蟻野
「困ったことに
 『おならわらし』が
 出現してしまったのです」
北小岩 「座敷わらしは
 うかがったことがございますが、
 おならわらしは
 初耳でございます」
門渡
蟻野
「妖怪の一種で
 誰も見たことがないのだけど、
 夜が更けてくると
 人の布団の中で
 飛び切りの屁をこいて
 どこかに消えてしまうんだ。
 冬にぬくぬくのお布団にくるまるのは
 日本人のかけがえのない
 やすらぎなんだけど、
 それを屁で崩壊させてしまう
 恐ろしい妖怪なんです」
小林&
北小岩
「・・・」

妖怪おならわらし・・・。
今晩あなたの布団の中から、
腐った屁の臭いが漂ってくるかもしれません。

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2022-02-20-SUN

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