しんしん〜
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北小岩 |
「夜も更けてまいりました。
厳しい冷えでございます。
先生も
お風邪など召されては
一大事です。
そろそろ休まれた方が」
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小林 |
「俺は読書してからや。
お前は先に休んどけ」
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北小岩 |
「かしこまりました。
おやすみなさい」
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読書というと聞こえはいいが、
だらしなくエロ本を読むだけである。
その証拠に先生の股間はすでにテントを張っている。
先生が書棚から
エロ本を手に取ったその時、
夜のしじまとテントを引き裂く声が轟いた。
「臭〜〜〜〜〜〜〜〜え!」
「何この臭い〜〜〜〜〜!」
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小林 |
「町に異変が起きとるな」
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北小岩 |
「駆けつけましょう!」
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先生と北小岩くんは町一番の暇人のため、
防犯係に任命されている。
ダダダッ トントン
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北小岩 |
「どうなさいましたか!」
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夫A |
「寝床に入って布団を掛けたら、
中からとんでもなく
臭い屁が漂ってきたんだよ」
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妻A |
「私の布団の中にも、
この世の物とは思えないほど
腐ったおならが入っていたのよ」
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夫A |
「妻は最初、
俺が嫌がらせで
屁を入れ込んだと勘違いして
怒っていたんだけど、
俺は屁の神様に誓っても
そんなことしてないんだよ」
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北小岩 |
「そうでございますか・・・」
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小林 |
「他の家に行ってみるか」
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トントン トントン
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北小岩 |
「先ほど
叫び声が聞こえましたが、
どうなさいましたか!」
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妻B |
「私は深呼吸すると
すぐ眠れるのね。
だけどさっき寝ようとして
大きく息を吸った時、
布団の中から
硫黄が爆発したような
おならの臭いがして、
それを肺の奥まで
吸い込んでしまったのよ」
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夫B |
「僕の布団にも
蔵出しのような屁が
注入されていた。
だけどどう考えても
誰かが侵入して
ないんだよ」
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北小岩 |
「それは不気味な上に
臭いでございますね」
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小林 |
「怪奇現象の専門家に
聞いてみるか」
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師弟が専門家の
門渡蟻野(とわたりありの)氏を訪れると、
氏は異変を察知しており
門の外で厳しい顔をしていた。
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小林 |
「町のやつらが
布団の中に屁をこかれ、
しかしこいた犯人もいなければ
その痕跡もない。
どういうこっちゃ」
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門渡
蟻野 |
「困ったことに
『おならわらし』が
出現してしまったのです」
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北小岩 |
「座敷わらしは
うかがったことがございますが、
おならわらしは
初耳でございます」
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門渡
蟻野 |
「妖怪の一種で
誰も見たことがないのだけど、
夜が更けてくると
人の布団の中で
飛び切りの屁をこいて
どこかに消えてしまうんだ。
冬にぬくぬくのお布団にくるまるのは
日本人のかけがえのない
やすらぎなんだけど、
それを屁で崩壊させてしまう
恐ろしい妖怪なんです」
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小林&
北小岩 |
「・・・」
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妖怪おならわらし・・・。
今晩あなたの布団の中から、
腐った屁の臭いが漂ってくるかもしれません。 |