「男たちは全員集合したか!」
「おう!」
輪の中心で場を引き締めているのは、
町一番の益荒男・
珍棒太(ちんぼうふとし)だった。
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珍棒太 |
「負けるわけには
いかねえからな!」
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町の男衆 |
「おう!」
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北小岩 |
「太さん、
いつにもまして青筋を立て、
太く気合いが入っておりますね」
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小林 |
「下手をすると
町の存続にかかわるからな」
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珍棒太 |
「それじゃあ開けるぞ!」
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ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
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町の男衆 |
「うお〜〜〜〜〜!」
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御旅所と呼ばれる場所から出てきたのは、
見たこともないほど巨大な
和式便器を模したうちわだった。
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珍棒太 |
「持ち上げるぞ!」
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町の男衆 |
「おう!」
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ぐぐぐぐ
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北小岩 |
「重たいでございます」
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珍棒太 |
「落とすなよ!
河原まで大移動だ!!」
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町の男衆 |
「わっせわっせわっせわっせ」
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先生の町と隣町の境に、
流れが極端にゆるい川がある。
10年に1度、川の向こうとこちらでうちわで
扇ぎあい、死闘を繰り広げる行事がある。
負けた町は
立ち直れないほどのダメージをおうのだ。
河原にスタンバイした両軍。
川の真ん中には巨大なうんこのような
造形物が浮かんでいる。
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審判 |
「位置について。
よ〜い、
ブリブリ〜〜〜!!」
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珍棒太 |
「いけ〜〜〜!」
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町の男衆 |
「そ〜れ! そ〜れ!」
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ぶんぶん びゅびゅっ
男衆が渾身の力をこめて扇ぐと、
うんこは相手岸に近づいた。
「負けるな!」
ぶんぶん びゅびゅっ
今度は先生サイドにうんこが流されてくる。
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町の男衆 |
「そ〜れ! そ〜れ! そ〜れ!」
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ぶんぶん びゅびゅっ
一進一退を繰り返し三時間が経過した。
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北小岩 |
「腕がもげそうでございます!」
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小林 |
「俺もや!」
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先生の町の男すべてが
ふにゃちん状態になっていた。
「今だ!」
ぶんぶんぶんぶんぶん
びゅっびゅっびゅっびゅっ
隣町の猛攻が始まった。
ど〜ん!
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町の男衆 |
「しまった!
こちらの岸に着いてしまった!!」
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審判 |
「うんこ一本!」
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審判がわけのわからないことをのたまい
スイッチを押すと。
ぐにょっ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!
ぽん!!
うんこから不穏な音がして、
上部の栓が飛んだ。
ぶりぶりぶり もわもわもわ〜〜〜
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珍棒太 |
「やべえ! 逃げろ!!」
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町の男衆 |
「くっ、
臭ええええええええええ!!!」
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うんこから通常のうんこの一千万倍という
恐ろしい臭さの煙が出て
あっという間に町を覆ってしまった。
1年間その臭気が消えることはない。
これほど恐ろしい戦いが他にあるであろうか。 |