KOBAYASHI
小林秀雄、あはれといふこと。

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。



其の九百八拾伍・・・鎮魂

小林 「今年もまた
 この日が来たな」
北小岩 「8月20日。
 男性の魂を鎮める日でございます」
小林 「なぜ毎年この日なのか知っとるか」
北小岩 「存じません」
小林 「『やらはた』はどうや」
北小岩 「ヤラずの二十歳(はたち)・・・。
 それは
 若き日のわたくしにとって、
 この世で最も
 恐ろしい言葉でございました。
 はっ!8(ヤら)月20(はた)日で
 ございますね。
 鎮魂の日に
 ふさわしいでございます」
小林 「そやな。
 では行くか」

薄暮の中、二人が向かったのは町はずれの川。

ぽっぽっぽっ

北小岩 「始まっておりますね」
小林 「もの悲しいな」

川岸に目を移してみよう。
そこにはモテない男たちが
多数かがみ込んでいる。

北小岩 「この一年、
 女性と気持ちいいことが
 できなかった方々や
 ブツが使い物に
 ならなくなってしまった方々が、
 己のイチモツを模した
 灯籠をつくり、
 川に流して
 鎮魂するのでございます」
小林 「言うなれば『チン魂』や。
『亀頭籠流し
 (きとうろうながし)』とも
 呼ばれとる」
北小岩 「そろそろわたくしたちも
 流しましょうか」
小林 「そやな」

師弟は風呂敷からそれぞれの亀頭籠を取り出した。

北小岩 「今年こそは
 いい思いができますように」
小林 「おなごども、
 ぐっと開いて待っとれよ」

力なく灯った二人の分身が流されていく。
その刹那。

小林 「むっ!
 松明を灯した舟が近づいて来くるで」
北小岩 「お仕置き隊の方々が乗っております」

ざばざばざばっ

北小岩 「鵜を放ちました」
舟上の
お仕置
き隊女
「お前らのこ汚いチンチンよ、
 滅べ!!」
舟上の
お仕置
き隊女
「鵜よ、
 鉄槌を下せ!!」

ぐいぐいぐいぐい

北小岩 「鵜が亀頭籠をくわえて
 沈めております!」

じゅっ じゅっ

北小岩 「ああ、
 わたくしたちのモノも・・・」

モテない男たちの『チン魂』は、
次々『沈魂』となってしまった。

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2023-08-20-SUN

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