ささ〜
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北小岩 |
「過ぎゆく風が爽やかに
頬を撫でてまいります。
わたくしたちが近頃とんと
モテなくなってしまったのは、
爽やかさが足りないからでは
ないでしょうか」
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小林 |
「一理あるな」
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北小岩 |
「これからは爽やかなものを
積極的にとりいれていきたいと」
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小林 |
「むっ!
なんやあれは」
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北小岩 |
「伝言板にこ汚い字が
のたうちまわっております」
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小林 |
「長老やな。
『おまえら
気がゆるみすぎとる』」
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北小岩 |
「それだけでございますか。
まったく爽やかではないです。
どういうことでしょうか」
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小林 |
「わからんが
悪い予感しかせん」
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ポツンポツン ザーッ ザザザザーッ
その日の夜は豪雨だった。翌日。
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北小岩 |
「凄まじい雨でしたが、
それにしても
水たまりが多すぎる気が
いたします」
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小林 |
「水たまりに向かって
道が傾斜しとらんか」
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北小岩 |
「そうでございま」
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ずるっ
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北小岩 |
「あああああ!」
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どぼん ぷ〜ん
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小林 |
「大丈夫か!」
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北小岩 |
「大丈夫ではございません。
水たまりに見えていたものは
深い穴で
肥だめになっておりました」
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小林 |
「なに!」
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北小岩 |
「臭いでございます〜〜〜」
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ずるっ
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小林 |
「あっ!」
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どぼん ぷ〜ん
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小林 |
「しまった!
俺まで落ちてしもうた。
くっ、臭せ〜〜〜!」
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パラパラ
その刹那、
いやらしい形のドローンが飛んできて
こ汚い紙をまき散らした。
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北小岩 |
「長老からです。
『ワシが子どもの頃は
肥だめがあり
落ちないように
気を引き締めて
生きていたんじゃ』」
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小林 |
「えっ?」
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北小岩 |
「『ところが
おまえら町の男たちは
ふやけとる。
だもんだから
水たまりに似た肥だめを
たくさんつくってやったよ。
落ちやすいように
傾斜もつけてやったよ。
秀吉には一夜城の伝説があるが
俺は一夜肥だめだな。
これで少しは気が引き締まるな。
あははははは』」
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小林 |
「・・・」
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長老が築いた一夜肥だめ。
気を引き締めるためなら
他にいくつも方法があると思うが
長老に他の方法などないのであろう。
あきらめよう。 |