その弐拾弐・・・恐怖
忙しい年の瀬だ。
ゆっくりと温泉にでもつかり、
寝グルメのフルコースなど満喫したいものである。
ふかふかの毛布にくるまりうつらうつら。
夢の舞台は、もちろん女護が島。
ポコ先の乾かぬ内に古今東西のあらゆる美女たちが
入れ代わりたち代わりやってきて、
全裸の私に向かって秘技の限りをつくしていく。
「かんべんしてください。
もうこれ以上すると、ポコが抜け落ちてしまいます~」
随喜の雄叫びをあげ、布団の中でのたうち回る私。
だが、夢というのはなかなか思い通りにいかないものだ。
つい怖い夢やくだらない夢を見てしまったりする。
そう、寝グルメの大敵は、
怖い夢やくだらない夢なのである。
先日も寝グルメを堪能しようとして
こんな夢を見てしまった。
私がこの世で一番怖いもの。
それは幽霊写真である。
幸せそうな被写体の後ろから、
幽霊が恨めしげにこちらをにらんでいる。
あ~、怖い。
考えるだけでゾゾゾッ だよ~。
その夢で私は雲に乗っていた。
後ろ手にしばられ正座させられている。
雲は後方に凄いスピードで飛んでいく。
なぜか、目の高さのあたりに小さな雲があり、
私の乗っている雲と同じ速度で前に進んでいる。
んっ? ギャ~~~~~~~~!
なんとそこにはページが開かれた
幽霊写真集が乗っていたのだ。
目の前30センチ。
一番はっきりと焦点があってしまう距離である。
後ろ手に縛られているので身動きできない上に、
魔力で顔をそむけることも
目をつぶることもできなくされてしまっている。
どこまでも追いかけてくる幽霊写真。
あっ、突風だ。頼む、幽霊写真よ落ちてくれ!
だが、幽霊写真のページがめくれて、
さっきよりもっと怖い
傷痍軍人の幽霊写真のページになってしまった。
怖いよ~~~! 女護が島、カモ~~~ン!
このように怖い夢は寝グルメの恐るべき敵だ。
だが、同じく見逃してならないのがくだらない夢である。
その夢は暗闇の世界だった・・・。
なぜか一点にだけスポットライトが当たっている。
おや? 布団の上に誰か寝ているぞ。
画面がズームする。なんだ、寝てるのは私じゃないか。
その時だ、暗闇の彼方から荘厳な声が響いてきた。
「もみましょうか?」
神の声に違いない。
だが、言っていることが理解できない。
「もう一度言ってください」と言うと、
さらに重厚な声でこう言った。
「もみましょうか?」
私はピュアな気持ちになりこう答えた。
「はい、もんでください」
「わかりました」
その瞬間漆黒の闇から千手観音の手があらわれ、
身体中を物凄いはやさでこちょこちょくすぐられた。
私はあまりのくすぐったさのため声をあげて身悶えた。
やっ、やっ、やめて。あははは、やめて。 くすぐった~い! あひあひあひゃ~!
私は笑いながら目を醒ました。
そこには敷布団に座った、間抜けな私がいた。
一時期、かなしばりに悩まされたことがあった。
友だちが
「昨日かなしばりにあって、
空中をぐるぐる回されちゃったよ」
という余計な話を聞かせてくれたばかりに、
私までかなしばりにあうようになってしまったのだ。
その日は頭のてっぺんと爪先から、
徐々にかなしばりがはいあがってきた。
どういうことになるのか想像もできず、
小羊のように恐怖におののいた。
両側からはい上がってきたかなしばりは、
ポコチンのところでひとつになった。
「ああ、私の人生ももはやこれまでか」と観念した。
だが、だんだんとチンチンが気持ちよくなってきたのだ。
ああ、気持ちいい!
その時私は思った。かなしばりに勝利したと。
それ以来かなしばりにあうこともほとんどなくなった。
このように寝グルメを楽しむには、
かなしばりに勝利する強い精神力も必要なのだ。
母から聞いた話だが私は小学生の時、
深夜にいきなり飛び起きて「ガンジー!」 とひとこと言ってまた寝たらしい。
母は私がクルクルパ~になっちゃったと思ったという。
う~む、総合的に考えてみると、
私は寝グルメに向かない人間なのかもしれないなあ。 |