小林秀雄のあはれといふこと

しみじみとした趣に満ちた言葉の国日本。
そんな国のいとおもしろき言の葉を一つ一つ採取し、
深く味わい尽くしていく。
それがこの項の主な趣向である。

其の参拾九・・・・遺伝子

1953年、アメリカのJ.D.ワトソン氏と
イギリスのF.H.クリック氏により、
遺伝子が二重らせん構造になっていることが解明された。
それから47年を経て、命の設計図といわれる
ヒトゲノム(人間の全遺伝子情報)が解読された。
さらに研究が進めば、遺伝病治療やガン治療などの医療が
飛躍的に進歩するだろう。
21世紀はもう、遺伝子抜きには語れなくなっている。

小林 「それにしても、バイオテクノロジーの進歩には
 目を見張るものがあるな」
北小岩 「個人の遺伝的特徴に応じた
 オーダーメード医療なども
 可能になりそうですね。
 そういえば、先日読んだ新聞に出ていた、
 遺伝子組み換えの初歩的な実験が
 来春から中学や高校でできるようになりそうだ
 との記事には驚きました」
小林 「そうやな。
 21世紀はバイオテクノロジーの世紀
 といわれているが、
 いよいよ身近なところにまで
 遺伝子の波は押し寄せているわな」
北小岩 「そうです。
 遺伝子工学に関する特許も、
 熾烈な競争になっています」
小林 「特許は早い者勝ちやからな。
 俺たちもまあひとつ、考えてみるか」
北小岩 「そこです、先生。
 日本はIT化の波に乗り遅れてしまいました。
 もう、バイオテクノロジーの波に
 乗り遅れるわけにはいきません。
 そこで私も遺伝子工学に関連した特許を
 取得しようと思い、いろいろ考案してまいりました」
小林 「ほんまか!どれ、見せてみい。
 なになに・・・
 『特許申請案その1・遺伝子組み換えによる
  玉金エアバッグ』・・・」
北小岩 「はい。早漏の人の遺伝子を組み換えて、
 その人を玉金にエアバッグが組み込まれた
 タフな男にかえるのです。
 早漏の人が女性とお楽しみの最中、
 すぐにイッてしまいそうになったら
 玉金が割れて中からエアバッグが飛び出します。
 これでイク寸前に
 女性とポコチンに一定の距離が保たれ、
 早漏の危険が回避できます。
 ポコが平静を取り戻したら、トライアゲインです」
小林 「なるほど!
 女性の
『えっ?もう終わっちゃったの!信じられな〜い』
 の一言は、男にとってはしんどいもんや。
 これなら堂々とプライドが保てるっちゅうもんやな。
 だが、玉金は二つしかないので2回しか使えん。
 それが今後の課題やな。
 次はなんや。
 ほう『特許申請案その2・
 遺伝子組み換えによる手のひら肛門』か。
 だいたい想像がつくな。
 遺伝子を組み換えて手のひらに肛門がくるようにし、
 手のひらで屁をかますんやろ」
北小岩 「さすが先生です。にぎりっ屁をする時、
 お尻から相手の鼻先までは距離があるため、
 途中で屁が逃げてしまいます。
 せっかく精魂込めてにぎりっ屁をしたのに、
 『何だ、それほど臭くないじゃん』
 といわれてしまうことがよくあります。
 でも、手のひらに肛門があれば
 ダイレクトなにぎりっ屁が楽しめ、
 相手に痛恨の一打を浴びせることができるのです」
小林 「ええやないか!」
次のメモには
『特許申請案その3・遺伝子組み換えによる陰毛孔雀』
と書かれている。
まさか、孔雀とでも
遺伝子組み換えしようというのであろうか。
小林 「そうや。北小岩のように地味な男は、
 もっとセックスアピールせなあかん。
 孔雀はメスよりもオスのほうがおしゃれや。
 オスが美しい羽を開き、メスを口説くんや」
北小岩 「そうなんです。
 そこからヒントを得ました。
 遺伝子を組み換えて
 陰毛の機能を極限まで高めるのです。
 この人こそは!と思う女性を見かけたら、
 孔雀の羽のようにぐわっと陰毛を開いてみせます。
 そうすれば、その女性はあまりの美しさに
 クラッとくるでしょう」
小林 「男たるもの己の遺伝子を存続させていくためには、
 積極性はかかせんからな」
最後の一枚には
『特許申請案その4・遺伝子組み換えによる乳モード』
と書いてあった。
これはどうやら、女性の乳首を使って
インターネットするものらしい。
遺伝子を組み換えて乳首をプッシュダイヤル化し、
そこを自分で何度もプッシュして文章をつくるのだ。
『21世紀は、iモードより気持ちEメールの乳モード』
などというどうしようもないキャッチフレーズまで
添えてある。
小林 「うむ。どれもこれも即実用可能はものばかりや!
 新世紀の特許に値する。
 でかしたぞ、北小岩!特許はスピードが命や。
 これからすぐに、この珠玉の案を持って
 特許庁に突撃や!」
北小岩 「はい、先生!」

二人はリサイクルショップで買った
二千円のママちゃりにまたがると、
特許庁に向かった。
だが、遺伝子組み換えの特許を申請する前に、
もうちょっとまともな人間に
遺伝子を組み換える必要があるのは、
間違いなくこの二人であろう。

2000-11-27-MON
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